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資生堂から2025年5月に発売された[SHISEIDO ビオパフォーマンス マイクロクリック コンセントレート]。「クリックするたび、刺激される。成分がいきわたる。」というキャッチコピーと、ペンのようなかたちのアプリケーターで、発売当時けっこう話題になりました。
ただ、いちばん驚くのは価格かもしれません。容量1.4mLで36,300円(税込)。単純に割ると1mLあたり約2万6,000円という計算になります。デパコスの美容液に慣れている方でも、さすがに「これは何にお金を払っているの?」と足が止まる価格だと思います。
そこで今回は、資生堂公式の全成分表示をベースに(出典4)、この製品の中身を正直に読み解いていきます。先にひとつだけお伝えしておくと、成分表そのものはかなりシンプルです。じゃあこの価格は何なのか——そこがこの記事のいちばんの読みどころになります。
ひとことで言うと

この製品の主役は、実は成分ではなく「届け方」。約20µmの芯を18本持つ使い捨てアプリケーターで、[ナイアシンアミド]入りの美容液を肌表面に届けるデバイスです。成分表はシンプルなので、価格の大半はこの仕組みに払っている、と考えるのが正直なところだと思います。
この記事のポイント
- 最大の独自性は成分ではなくデバイス。資生堂独自の18本の芯(各約3mm間隔)を持つ使い捨てアプリケーターで美容液を届ける「プリサイスデリバリー テクノロジー」が本品の核で、関連技術は特許出願もされています。
- 成分の主役は表示5番目の[ナイアシンアミド]。ヒト臨床データのある実力成分で、そこは素直に評価できます。ただし化粧品ではかなりポピュラーな定番成分でもあり、本品だけの珍しい配合というわけではありません。
- 気になるのは表示3番目の[変性アルコール]。デバイスで美容液を素早く届けるための基材(溶剤・清涼剤)として使われている可能性が高く、それ自体が悪者というわけではありません。ただアルコールが苦手な方は知っておいて損はないポイントです。
基本情報

| ブランド | SHISEIDO(資生堂)ビオパフォーマンス |
| 価格・容量 | 1.4mL/33,000円(税抜)・36,300円(税込)※セラム1本+使い捨てアプリケーター6個 |
| 発売日 | 2025年5月1日 |
【はじめての方必読】当サイトの成分解析について
- 成分解析は各成分の一般的な配合目的を記載したもので、製品の効果効能を保証するものではありません。
- リニューアル等により全成分が変更される可能性があります。見つけた場合はお問い合わせフォームから教えて頂けると助かります。
SHISEIDO ビオパフォーマンスとはどんなライン?
[ビオパフォーマンス]は、資生堂のグローバルブランド「SHISEIDO」の中でもエイジングケア(年齢に応じたお手入れ)を担うライン。百貨店を中心に約380店舗と公式オンラインで展開されている、いわゆるデパコスの価格帯です(出典1・出典3)。資生堂はこのシリーズ全体を「先進性をベースに進化し続けるシリーズ」と位置づけ、肌のメカニズムを解き明かし、肌が本来持っている力を引き出すことを掲げています(出典1)。
その中で本品は、かなり異色の立ち位置にあります。というのも、これは「塗る美容液」ではなくアプリケーター一体型のスキンケアデバイスだから。ノック式のペンのような本体に、使い捨てのアプリケーターを装着して、カチカチとクリックしながら肌に当てていく——という、これまでのスキンケアとはだいぶ違う使い方をします。
資生堂によれば、この基幹技術の確立に4年、発売までに通算6年をかけたとのこと(出典5)。ターゲットとして挙がっているのは、目もとの乾燥小じわ、小鼻から口もとの気になる小じわ、そして頬の毛穴。ピンポイントで気になるところに使う設計です。

顔全体にたっぷり塗る美容液ではなく、気になるところにピンポイントで使う「道具」だと思うと、1.4mLという少なさも少し腑に落ちます。とはいえ価格のインパクトは大きいので、中身をちゃんと見ていきますね。
最大の特徴は成分じゃない?「プリサイスデリバリー テクノロジー」の仕組み

成分の話に入る前に、本品の中心にある技術から見ていきます。というのも、この製品を語るうえで成分表より先に説明しないといけないのが、資生堂が「プリサイスデリバリー テクノロジー」と呼んでいるこの仕組みだからです。
18本・約20µmの芯が届けているもの
使い捨てアプリケーターの先端には、長さ約20µm(マイクロメートル=1000分の1ミリ)の芯が18本並んでいます。本体をクリックするたびに、この芯を通して美容液が少しずつ押し出され、肌表面に届けられる、という設計です(出典1・出典2)。
本数だけでなく配置にもこだわりがあるようで、資生堂のグローバル公式サイト(本国サイト)を見ると、18本の芯はそれぞれ約3mm間隔で配置されている(”each spaced 3mm apart for precise delivery”)と説明されています(出典11)。日本語の商品ページには出てこない情報で、1回のクリックで肌の複数ポイントに均等に美容液を行き渡らせる設計であることがうかがえます。
ここで注目したいのが「約20µm」という長さ。一般的なマイクロニードルは、美容用途で長さ約200µm、医療用途では約800µm程度とされています(出典9)。それと比べると、本品の芯は一桁以上短いんです。人の角層(肌のいちばん外側の層)の厚みが一般に10〜20µm程度とされていることを考えると、本品の芯はちょうど角層の厚みと同じくらい。つまり、肌の奥に刺すというより、いちばん表面のところで美容液を置きながら、ごく浅い物理的な刺激を与えるイメージに近いと考えられます。
ここから先は私の読みなのですが、この「浅さ」は偶然ではなく設計上の選択だと思います。針が肌を深く貫くタイプの製品は、日本では化粧品ではなく医療機器や医薬部外品の領域に入っていきます。本品はあくまで化粧品として発売されているので、角層レベルにとどめる長さを選んでいる——という見方は自然かなと。ただしこの解釈は公式資料に明記されているわけではないので、あくまで私の推測として受け取ってください。

「ニードル」と聞くと肌の奥までブスッといくイメージがありますが、本品の芯は角層の厚みと同じくらいのごく浅いもの。刺すというより「肌表面をつつきながら美容液を置いていく」感じだと思っておくと、期待値のズレが少ないと思います。
「貼るタイプ」のニードルコスメとの違い

ここ数年で増えた「ニードルコスメ」の多くは、シートやパッチに溶けるタイプの針が付いていて、それを肌に貼って使うものです。ポイントは、その針そのものが美容成分でできているということ。ヒアルロン酸などを固めて針の形にしてあり、肌の水分で溶けながら成分を届けます。
この方式には長所もあるのですが、資生堂の開発担当者は課題も挙げています。針を成形できる素材でないと使えないため、配合できる成分に制約が出てしまう、という点です。針の形を保てて、かつ肌で溶ける素材——という条件から外れる成分は、そもそも入れられません(出典5)。
本品はそこを分けています。芯はあくまで美容液を運ぶ「通り道」で、成分は液体側に持たせる。だから処方の自由度が高い、というのが資生堂の主張です。実際、本品の全成分を見ると[ナイアシンアミド]や[グリチルリチン酸2K]、複数の植物エキスなど、針の形にはしづらい成分が普通に入っています。この主張自体は、成分表からも筋が通っていると感じました。
ここは当初「公開データが見つからない」と書いていたのですが、あらためて調べ直したところ、資生堂が本品の発表に先立つ2025年1月10日に、関連しそうな技術リリースを出しているのを見つけました。「安全かつ美容医療に迫る圧倒的な肌改善効果をもたらす次世代マイクロニードルを開発」というタイトルで、「注入」と「押圧」の2つの機能を組み合わせるという説明が、本品の仕組みとかなり近いんです(出典10)。このリリースには特許出願番号(特願2020-166213、特願2022-056466)も明記されており、単なる宣伝文句ではなく技術として出願まで進んでいることが確認できます。本品発表のわずか6日前というタイミングもあわせて考えると、これがプリサイスデリバリー テクノロジーの土台になった研究だと考えるのが自然だと思います。ただし製品名までは明記されていないので、完全に同一だと断定はできません。
研究で分かっていること
このリリースによると、次世代マイクロニードルを2日に1回・7日間使用したところ、免疫・血管・コラーゲンなど細胞外マトリクスに関わる遺伝子群の発現が変化したと報告されています。また、ナイアシンアミドのような水溶性成分の浸透量が有意に向上し、より深くまで届くことも確認されたとのこと。肌の変化としては、2週間後に顔の下半分の体積が有意に減少し、8週間後にはほうれい線がより浅く・短くなったという結果も示されています(出典10)。ただし被験者数や試験の実施主体(社内か外部機関か)は公表資料に記載がなく、査読論文でもないため、そこは差し引いて読む必要があります。
ちなみに、針状のデバイスでスキンケアすること自体の仕組みや注意点については、針スキンケアの基本についてまとめた記事でも解説しているので、気になる方はあわせてどうぞ。

「針に成分を練り込まなくていいぶん、中身は自由に組める」——これは理屈だけでなく、見つけた技術データや特許出願からも筋が通っていそうです。ただしメーカー自身が発表した資料で、査読論文でも被験者数入りの臨床試験でもないので、私は「有望だけど、まだメーカー主張の域」くらいの温度感で受け止めています。
主役成分はナイアシンアミド|実力派なのに、あえて化粧品区分
ここからは成分の話です。本品は医薬部外品ではなく化粧品なので、「有効成分/その他の成分」という区分けはなく、21成分がフラットに配合量の多い順で並びます(全成分の一覧表は記事の最後にまとめています)。
その中で、美容目的の主役といえるのが表示5番目の[ナイアシンアミド]。正直に言うと、この製品の美容成分は「ナイアシンアミド1本+植物エキス数種」というかなりシンプルな構成です。成分をこれでもかと盛る設計ではありません。
ナイアシンアミドの研究データ
[ナイアシンアミド]はビタミンB3の一種で、化粧品成分の中でも研究データがしっかりしている部類に入ります。働きとしては、角層のセラミドなどバリアに関わる脂質が作られるのを助けたり、真皮でコラーゲンが作られるのを後押ししたりする方向が報告されています。資生堂も本品でこの成分を「うるおい保護」目的の配合成分として位置づけています(出典3)。
メーカー自身が公表している効能評価試験にも、実はもう少し詳しい内訳があります。日本語の商品ページには「乾燥による小じわを目立たなくします(効能評価試験済み)」としか書かれていませんが、資生堂のグローバル公式サイト(本国サイト)まで見に行くと、12日間の使用で「消費者試験(101名):目もとのたるみ・小じわの改善」「臨床試験(33名):ほうれい線(口もとの小じわ)の軽減」「臨床試験(34名):くすみ・毛穴の改善」という3つの試験結果が示されています(出典11)。改善の具体的な数値(%など)や試験デザイン(プラセボ対照かどうか)までは公開されていませんが、100名規模・30名台の試験を複数走らせているという事実からは、それなりにきちんと検証したうえで発売している印象を受けます。
研究で分かっていること
ナイアシンアミドという成分そのものについては、第三者による研究もあります。5%のナイアシンアミドを1日2回・12週間、顔の片側だけに塗って反対側(基材のみ)と比べた二重盲検の試験があり、細かいしわ・シミ・赤み・肌の黄ばみのいずれについても、塗った側ではっきりとした改善が確認されました(ヒト臨床試験/出典6:Bissett et al., Dermatologic Surgery, 2005)。
ただし、ここは冷静に。この試験で使われたのは5%という濃度で、本品の配合濃度は公表されていません。表示5番目という位置からは、そこそこの量は入っていそうだと推測はできるものの、5%と同じ結果が出るかどうかは分かりません。「成分としての実力はある。本品でどこまで出るかは不明」——というのが正確な言い方だと思います。それに、ナイアシンアミドは化粧品全体で見ればかなりポピュラーな定番成分でもあるので、「実力のある成分をきちんと使っている」ことは評価できても、本品ならではの珍しい配合というわけではありません。
ナイアシンアミドという成分そのものについては、当ブログの「ナイアシンアミドとは?」の記事で詳しく解説しているので、あわせてどうぞ。

ナイアシンアミドは、しわ・くすみ・バリアと守備範囲の広い優等生。データもしっかりしています。メーカーの試験規模を見ても手を抜いていない印象ですが、本品の濃度は非公開なので、「良い成分が入っている」までは言えても「だから効く」と言い切るのは違うかなと思っています。
医薬部外品との違い、なぜあえて化粧品区分なの?
ここが個人的にいちばん面白いと思ったところです。[ナイアシンアミド]は日本では医薬部外品の有効成分として、シワ改善・美白・肌荒れ防止のそれぞれで承認された事例がある成分。つまり「薬用化粧品として、はっきり効能をうたえる成分」なんです。
にもかかわらず、本品は医薬部外品の承認を取っていません。表示できるのは、化粧品の業界自主基準にもとづく「乾燥による小じわを目立たなくする」という、自社の効能評価試験に合格した範囲の表現だけです(出典3)。
この2つは、似ているようで意味がかなり違います。
- 医薬部外品の「シワを改善する」:有効成分の濃度まで含めて国の承認を受けたもの。シワそのものへの働きかけを表示できます。
- 化粧品の「乾燥による小じわを目立たなくする」:業界の自主基準にもとづく試験に合格すれば表示できるもの。うるおいで小じわを目立たなくする、という範囲の話です。
なぜ資生堂ほどの会社が医薬部外品にしなかったのか、公式の説明は見当たりません。ただ推測としては、医薬部外品は有効成分の種類・濃度・処方まで含めて承認が必要になるため、本品のような「デバイスありき」の新しい形の製品では、開発のスピードや自由度の面で化粧品のほうが動きやすかった、という事情はありそうです。ここは資料で裏が取れていないので、あくまで一つの見方として。

「シワ改善」で承認を取れる実力のある成分を、あえて化粧品の枠で使っている——ここが本品のちょっと不思議なところ。表示のうえでは控えめですが、成分としてのポテンシャル自体は低くないと思っています。
そのほかの成分もチェック
主役は[ナイアシンアミド]ですが、脇を固める成分にも見どころがあります。役割ごとに見ていきますね。
肌荒れをなだめる成分(グリチルリチン酸2K)
表示8番目の[グリチルリチン酸2K]は、甘草(カンゾウ)由来の抗炎症成分。医薬部外品でも有効成分として頻繁に使われる、実績のある定番です。本品は化粧品なので有効成分としての表示はありませんが、肌荒れやゆらぎをなだめる方向のケアを、さりげなく支えているとみられます。
芯で肌をつつくという性質上、使い方によっては肌への負担がゼロとは言えない製品です。そこに抗炎症成分を上位で入れているのは、処方としては理にかなった選択だと感じました。
皮膚常在菌をサポートする成分(α-グルカンオリゴサッカリド)

個人的に「おっ」と思ったのがこれ。[α-グルカンオリゴサッカリド]は、皮膚の常在菌のバランスを整えることを狙った機能性の糖です。腸活でいう「プレバイオティクス」(善玉菌のエサになる成分)の、肌バージョンだと思ってもらうと分かりやすいと思います。
研究で分かっていること
2週間続けて使う試験で、皮膚常在菌の種類のバランスを示す指標が改善し、善玉菌とされる表皮ブドウ球菌の比率が増え、肌荒れに関わるとされる黄色ブドウ球菌の比率が減った、という報告があります(連用試験/出典7:段中瑞ほか, 日本化粧品技術者会誌, 2021)。
ここは正直に補足しておきます。この成分は資生堂の独自成分ではなく、原料メーカーが供給している汎用の原料です(原料名は「BIOECOLIA」)。上のデータも資生堂の自社データではなく、小規模な連用試験の報告。だから「本品だけの強み」ではありませんし、この結果がそのまま本品で再現される保証もありません。それでも、こういう地味な整肌成分が入っているのは私は好きです。

ざっくり言うと「肌の上の菌にとってのごはん」。派手さはないけれど、肌のコンディションを土台から整える方向の成分です。独自成分ではないので過度な期待は禁物ですが、入っていて損はないと思います。
保湿成分と植物エキス
実は、キシリトール・グリセリン・DPGの3つは、資生堂が「バリアフィルコンプレックス」という名前でひとまとめにして紹介している保湿バリア設計です(出典3)。成分単体としては目新しいものではありませんが、組み合わせにわざわざ名前を付けて訴求しているところに、地味な保湿の土台にもこだわっている様子がうかがえます。
うるおいを支えるのは、おなじみの顔ぶれです。
- [グリセリン]:表示4番目。角層に水分を引き込む、保湿剤の代表格。うるおいのベースを作ります(バリアフィルコンプレックスの構成成分)。
- [キシリトール]:糖アルコール系の保湿成分。角層の水分保持をサポートします(バリアフィルコンプレックスの構成成分)。
- [乳酸桿菌/コメ発酵物]:乳酸菌でお米を発酵させた液。発酵の過程で生まれるアミノ酸や乳酸などが、保湿となじみの良さに寄与するとされます。
- [ヒアルロン酸Na]:肌表面で水を抱えてうるおいを保つ、定番の保湿成分。
- [DPG]:保湿しつつ他の成分を溶かし込む、処方の土台になる成分です(バリアフィルコンプレックスの構成成分)。[BG]も同様の役割です。
植物エキスは4種類。いずれも整肌の方向で使われることが多い成分です。
- [アカツメクサ花エキス]:レッドクローバーの花のエキス。イソフラボンを含み、抗酸化・保湿目的で使われるのが一般的です。
- [キハダ樹皮エキス]:ミカン科キハダの樹皮エキス(生薬では黄柏)。含まれるベルベリンについて、紫外線で低下した肌のバリア機能を改善する活性成分だと同定した研究発表があります(別メーカーの研究/出典8)。
- [ミシマサイコ根エキス]:生薬「柴胡」としても知られる根のエキス。抗炎症の方向で知られ、化粧品では引き締め・保湿目的で使われます。
- [カシア樹皮エキス]:シナモンの近縁種の樹皮エキス。収れん(引き締め)・整肌目的で配合されることが多い成分です。
これらの植物エキスについては、資生堂独自の研究発表は見つけられませんでした。なので本記事では、一般に知られている原料としての特性の範囲でご紹介するにとどめています(キハダ樹皮エキスだけは他社の研究発表を出典として使いました)。

保湿も植物エキスも、飛び道具というより「土台をきちんと整える」顔ぶれ。この製品はやっぱり、成分表で殴るタイプではないんだなと感じます。
正直に気になる点
表示3番目の変性アルコール
全成分は原則として配合量の多い順に並びます。本品は[水][DPG]に続く3番目に[変性アルコール]が来ていて、さらに終盤の17番目にも[エタノール]が別枠で入っています。
アルコールは、清涼感を出したり、引き締め感を演出したり、成分を溶かしたり、防腐を助けたりと役割の多い成分です。本品はクリックで美容液を素早く均一に押し出す設計なので、粘度を調整したり成分をなじみやすくしたりする基材として、処方上あえて上位に置いている可能性が高いと考えられます。一方で、アルコールは揮発するときに肌表面の水分を一緒に持っていく性質もあり、乾燥やヒリつきを感じる方もいます。
本品がターゲットにしているのは「目もとの乾燥小じわ」なので、方向性としては少し気になるところではあります。とはいえ、素早く乾いてベタつかない使用感や、デバイスで安定して美容液を押し出すための処方の都合だと考えると、納得できる配合でもあります。悪者扱いして下げすぎるのはフェアではないと思う一方、アルコールに反応しやすい方は知っておいて損はないポイントです。
1.4mLで36,300円というコストの読み方
ここまで見てきたとおり、本品の成分構成はかなりシンプルです。[ナイアシンアミド]を軸に、抗炎症成分と保湿成分、植物エキスを添えた設計。正直、成分表だけを見て「これで3.6万円」と言われたら、私は納得できないと思います。
つまり、この価格の大部分は中身ではなく、デバイスと使い捨てアプリケーターの製造コストに払っていると考えるのが自然です。約20µmの芯を18本、3mm間隔で精度よく作って使い捨てにするというのは、それ自体がかなりのコストのはず。ここを「成分の対価」だと思って買うと、期待とズレます。
正直な例え話をすると、同じ3万円台をかけるなら、美容皮膚科でマイクロニードル系の施術(ダーマペン等)を受けるという選択肢も比較対象になってくると思います。クリニックの施術は医療機器として、より深く針を入れられたり、高濃度の美容成分を同時に注入できたりするものが多く、「変化の実感」という面ではクリニックのほうに分がある可能性があります。本品はあくまで家庭用の化粧品として、通院不要・自分のペースで日常的に使える安全性重視の設計。「強い効果を医療に求めるか」「手軽さ・続けやすさをセルフケアに求めるか」で、選ぶべきものは変わってくると思います。
もうひとつ、継続コストの話も。使い方の目安は、はじめの12日間は2日に1回、その後は週1回程度。付属のアプリケーターは6個なので、最初の12日間でちょうど使い切る計算になります。そのあとも続けるならアプリケーターの追加が必要になるので、購入前に継続の費用感を確認しておくと安心だと思います。
あと地味に大事なのが、使う前の準備。アプリケーターのパウチを開けたら30分以内に使い、はじめに30〜40回ほど空打ちして中の空気を抜く必要があります(出典3)。ちょっと手間のかかる製品なので、スキンケアはとにかく手早く済ませたい方には向かないかもしれません。

「成分にお金を払っている」と思うとモヤっとしますが、「新しい仕組みの道具を買っている」と思えば納得しやすい製品。手間も少しかかるので、そこを楽しめるかどうかが分かれ目だと思います。
どんな人に向いている?
🙆♀️ 向いていそうな人
- 目もと・口もとの乾燥小じわや頬の毛穴に、ピンポイントでアプローチしたい人。
- 新しい仕組みのスキンケアを試すこと自体を楽しめる人。
- デパコスの投資的なスキンケアに抵抗がなく、価格の内訳を理解したうえで選べる人。
- スキンケアに数分の手間をかけるのが苦にならない人(空打ち・クリック操作あり)。
🔍 使う前に確認したい人
- アルコールで乾燥やヒリつきが出やすい人(変性アルコールが表示3番目、エタノールも配合)。
- 肌がとても敏感な人。まぶた・粘膜への使用はできない旨の注意書きがあります。
- 亜硫酸類で接触アレルギーが出たことのある人(酸化防止剤として[ピロ亜硫酸Na]を配合)。
- 成分の濃さ・処方の充実度にお金を払いたい人(本品の価格はデバイス由来と考えられます)。

まとめると「体験に投資できる人」向き。逆に、同じ予算で成分の充実した美容液を選びたい人には、たぶん本品よりコスパのいい選択肢があると思います。
よくある質問
Q. 痛くないですか?
A. 芯の長さは約20µmで、角層の厚み(一般に10〜20µm程度)と同じくらいのごく浅い設計です。肌の奥まで刺すタイプではありません。ただし感じ方には個人差がありますし、まぶたや粘膜には使えないという注意書きがあるので、そこは必ず守ってください。
Q. 医薬部外品のシワ改善美容液とは何が違いますか?
A. 本品は化粧品です。表示できるのは、化粧品の業界自主基準にもとづく「乾燥による小じわを目立たなくする」という範囲まで。国が有効成分の濃度まで含めて承認した医薬部外品の「シワを改善する」とは、位置づけが違います。[ナイアシンアミド]自体は医薬部外品の有効成分としての承認事例もある成分ですが、本品はその区分を取っていません。
Q. 毎日使えますか?
A. メーカーの目安は、夜の洗顔・化粧水のあとに、はじめの12日間は2日に1回、それ以降は週1回程度。1回につき50クリックほどが目安とされています。毎日使うタイプではありません。
Q. 3.6万円の価値はありますか?
A. 成分表だけを基準にすると割高に感じると思います。この価格は主にデバイスと使い捨てアプリケーターのコストと考えるのが自然で、「新しい仕組みを体験することにお金を払う」製品です。同じ予算でクリニックのマイクロニードル施術を検討するという選択肢もあるので、そこと比べたうえで価値を感じるかどうかで、評価はかなり変わると思います。
まとめ
SHISEIDO ビオパフォーマンス マイクロクリック コンセントレートは、成分表を読むほど「主役は成分ではない」とはっきりしてくる、ちょっと珍しい製品でした。美容成分の軸は[ナイアシンアミド]1本。そこに[グリチルリチン酸2K]、[α-グルカンオリゴサッカリド]、保湿成分と植物エキスを添えた、素直でシンプルな設計です。
本当の主役は、約20µmの芯を18本(各約3mm間隔)持つ使い捨てアプリケーターで美容液を届ける「プリサイスデリバリー テクノロジー」のほう。針そのものを美容成分で作る従来の貼るタイプと違って処方の自由度が高い、という資生堂の主張は、成分表からも筋が通っていると感じました。特許出願や、101名・33名・34名規模の効能評価試験など、メーカーとしての裏付けも一通り確認できましたが、いずれもメーカー自身の発表であり、査読を経た第三者データとまでは言えません。
だから私の結論はこうです。「成分に投資する美容液」ではなく「新しい届け方に投資するデバイス」。そう理解したうえで、アルコールとの相性と、クリニックという選択肢の両方を頭の片隅に置いて選べば、期待とのズレは小さいと思います。

成分解析をしていると、たまにこういう「中身より仕組みで勝負している製品」に出会います。良い悪いではなく、何にお金を払うのかがはっきりしていれば、それはそれで納得のいく買い物になると思います。
全成分と特徴
| 成分名 | 役割 | 特徴 |
|---|---|---|
| 水 | ベース | 処方の土台となる溶媒 |
| DPG | 保湿・溶剤 | べたつきを抑えつつ他成分を溶かす(バリアフィルコンプレックス構成成分) |
| 変性アルコール | 清涼・溶解補助 | 表示3番目と上位。揮発時に乾燥を感じる人も |
| グリセリン | 保湿 | 角層に水分を引き込む定番の保湿剤(バリアフィルコンプレックス構成成分) |
| ナイアシンアミド | 訴求成分(主役) | 表示5番目。バリア・キメをサポート |
| キシリトール | 保湿 | 糖アルコール系。角層の水分保持を助ける(バリアフィルコンプレックス構成成分) |
| 乳酸桿菌/コメ発酵物 | 保湿・整肌 | 発酵由来のアミノ酸・乳酸などを含む |
| グリチルリチン酸2K | 抗炎症 | 甘草由来。肌荒れをなだめる定番成分 |
| α-グルカンオリゴサッカリド | 整肌(プレバイオティクス) | 皮膚常在菌のバランスを整える機能性の糖 |
| ヒアルロン酸Na | 保湿 | 肌表面で水を抱えうるおいを保つ |
| アカツメクサ花エキス | 整肌・抗酸化 | レッドクローバー由来。イソフラボンを含む |
| キハダ樹皮エキス | 整肌 | ベルベリンを含む。生薬では黄柏 |
| ミシマサイコ根エキス | 整肌 | 生薬「柴胡」。抗炎症の方向で知られる |
| BG | 保湿・溶剤 | 処方のベースを支える |
| クエン酸Na | pH調整 | 処方の安定性を保つ緩衝剤 |
| EDTA-2Na | キレート剤 | 金属イオンによる劣化・変色を防ぐ |
| エタノール | 清涼・防腐サポート | 変性アルコールとは別枠で表示17番目 |
| クエン酸 | pH調整 | クエン酸Naと組んでpHを一定に保つ |
| ピロ亜硫酸Na | 酸化防止 | まれに亜硫酸類への接触アレルギー報告あり |
| カシア樹皮エキス | 整肌・収れん | シナモン近縁種の樹皮エキス |
| フェノキシエタノール | 防腐 | 化粧品で広く使われる代表的な防腐剤 |
※配合の正確な順序・全項目は商品の全成分表示をご確認ください。配合量は非公開です。
特性タグ:化粧品(医薬部外品ではありません)/「乾燥による小じわを目立たなくする」効能評価試験済み/アルコール(変性アルコール・エタノール)配合/使い捨てアプリケーター式

あらためて21成分を並べてみると、本当にすっきりした処方だなと思います。この短さが「成分ではなく届け方に投資した製品」であることを、いちばん正直に物語っている気がします。
参考文献・出典
- 株式会社資生堂 プレスリリース「クリックするたび、刺激される。成分がいきわたる。新しい未来型スキンケア。SHISEIDO ビオパフォーマンス マイクロクリック コンセントレート」(2025年1月16日配信/PR TIMES):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002780.000005794.html
- 株式会社資生堂 企業情報サイト ニュースリリース「クリックするたび、刺激される。成分がいきわたる。SHISEIDO ビオパフォーマンス。」:https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003940
- SHISEIDO公式ブランドサイト「ビオパフォーマンス マイクロクリック コンセントレート」商品ページ(価格・容量・使用方法・効能評価試験の記載・バリアフィルコンプレックスの記載):https://brand.shiseido.co.jp/bio-performance-microclick-concentrate-4514254183519.html
- SHISEIDO公式ブランドサイト 全成分表示ページ(配合順の確認用):https://brand.shiseido.co.jp/4514254183519-full-ingredients.html
- 週刊粧業オンライン「資生堂、新しい未来型のニードルコスメスキンケアを実現」2025年6月(開発背景・開発期間・貼るタイプとの比較に関する開発担当者コメント/有料記事のため一部のみ参照):https://www.syogyo.jp/news/2025/06/post_041392
- Bissett DL, Oblong JE, Berge CA. “Niacinamide: A B Vitamin that Improves Aging Facial Skin Appearance.” Dermatologic Surgery. 2005;31(7 Pt 2):860-865.(ヒト臨床試験)PMID: 16029679 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16029679/
- 段中瑞・横田真理子・枝雄二「α-グルカンオリゴサッカリドによる皮膚常在菌叢への影響」日本化粧品技術者会誌. 2021;55(2):176.(連用試験)DOI:10.5107/sccj.55.176 https://doi.org/10.5107/sccj.55.176
- 佐藤製薬株式会社 ニュースリリース「紫外線による皮膚バリア機能低下を改善するキハダ樹皮エキスの活性成分を同定」(2023年11月28日):https://www.sato-seiyaku.co.jp/newsrelease/2023/231128/
- コスメディ製薬株式会社「富士山ニードルについて」(一般的なマイクロニードルの長さ:美容用途約200µm/医療用途約800µmの参考):https://cosmed-pharm.co.jp/fujisan-needle/about/detail/
- 株式会社資生堂 プレスリリース「安全かつ美容医療に迫る圧倒的な肌改善効果をもたらす次世代マイクロニードルを開発」(2025年1月10日配信/PR TIMES。特許出願番号:特願2020-166213、特願2022-056466。本品の発表に先立つ技術リリースで、製品名の明記はなし):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002771.000005794.html
- SHISEIDO公式グローバルサイト(本国/米国版ブランドサイト)商品ページ(マイクロポイントの間隔、効能評価試験の人数内訳など、日本語版商品ページには無い詳細情報):https://www.shiseido.com/us/en/bio-performance-micro-click-concentrate-0729238218369.html

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