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湿気の多い日、朝きれいにブローしたはずの髪が、駅に着くころにはもう広がっている。ここ数年、明らかにうねる毛が増えた気がする——「くせ毛を直す成分」で検索してこの記事にたどり着いた方は、たぶんそんなもやもやを抱えていると思います。私もまさに湿気に負けるタイプなので、気持ちはよく分かります。
先に正直なことをお伝えすると、塗るだけでくせ毛が直毛になる化粧品成分は、今のところありません。ただ、それは「何をしても無駄」という意味ではまったくないんです。うねりがどうして生まれるのかは毛髪科学でかなり細かく解明されていて、その仕組みのどこに手を入れるかで、ヘアケア成分は大きく2タイプに分かれます。しかも中には、大型放射光施設を使ったX線解析で「なぜ効くと考えられるのか」まで確かめられている成分もあります。この記事では、うねりの正体・成分表の読み方・注目成分の研究データを、一次情報をたどりながら整理していきますね。
【はじめての方必読】当サイトの成分解析について
- 成分解析は各成分の一般的な配合目的を記載したもので、製品の効果効能を保証するものではありません。
- リニューアル等により全成分が変更される可能性があります。見つけた場合はお問い合わせフォームから教えて頂けると助かります。
ひとことで言うと

くせ毛の正体は、髪の内部にある性質の違う2種類の細胞の”偏り”。いまのヘアケア成分は、この偏りそのものを作り替えるのではなく、①ダメージで乱れたケラチンを補修する ②水分の出入りをコントロールして膨らみ方の差を抑える、の2方向で「うねりにくい状態」を保つものです。直毛にする魔法ではないけれど、扱いやすさは確実に変わると思います。
この記事のポイント
- うねりの正体は、毛髪内部の2種類の細胞(オルトコルテックス/パラコルテックス)の分布の偏り。水を含んだときの膨らみ方の差が「曲がり」を生みます。
- くせ毛ケア成分は「ケラチン補修型」と「水分コントロール型」の2つ。成分表はこの2軸で読むと迷いません。
- 目玉はトステア®(神戸大学×ロート製薬)。X線構造解析で髪内部のねじれの乱れが小さくなることを確認した、機序まで示せている数少ない成分です。
そもそも、くせ毛・うねり毛はなぜ起こる?
成分の話に入る前に、ここを押さえておくと後がぜんぶ分かりやすくなります。「なぜ髪は曲がるのか」です。
髪の内部構造の偏りが「曲がり」を生む仕組み

髪の毛の大部分を占めているのは[コルテックス]と呼ばれる繊維の束です。表面のキューティクルばかり注目されがちですが、髪の太さ・強さ・そして「曲がり方」を決めているのは、こちらの内側の部分。
そしてこのコルテックス、実は性質の違う2種類の細胞でできています。花王の研究によると、ケラチンの繊維がらせん状にねじれて並んでいる「オルトコルテックス」と、まっすぐ平行に並んでいる「パラコルテックス」の2種類。直毛ではこの2つが比較的均等に散らばっているのに対し、くせ毛・うねり毛ではどちらかに偏って配置されていることが分かっています。しかも偏りの大きさは、くせの強さに比例するそうです(出典1)。
この構造は、大型放射光施設SPring-8を使ったX線の解析でも調べられています(出典2)。髪1本の中を、それだけの設備を使って覗きにいっているわけですね。

髪の中身が「1種類の均一な繊維」じゃない、というのが最初の驚きポイント。性質の違う2種類が偏って入っているから曲がる——バイメタルの定規が熱で反るのに、ちょっと似ていると思います。
生まれつきのくせ毛と、加齢で増えるくせ毛は同じメカニズム
「若いころは直毛だったのに、最近うねる」という悩み、すごく多いと思います。花王の解説では、加齢とともに直毛が減ってうねり毛が増える傾向が確認されていて、しかも生まれつきのくせ毛でも、加齢で後から出てくるくせ毛でも、コルテックスの偏りという同じ傾向が見られるとされています(出典1)。原因は違っても、髪が曲がる仕組み自体は共通、ということですね。
生まれつき側の要因については、遺伝の研究も進んでいます。巻き毛の生物学・遺伝学をまとめた総説では、毛の内部構造をつくるのに関わる[トリコハイアリン]や、銅を運ぶタンパク質、ケラチン74といった遺伝子が、髪のカールの強さに関わると報告されています(出典3)。つまり生まれ持ったくせの強さそのものを塗って変えられる成分は、現時点では存在しません。
一方、後天的な要因として挙げられるのが、加齢による毛根まわりの変化、紫外線、そしてブリーチ・カラー・パーマの繰り返しによるダメージです。こちらはケアと成分で立て直せる余地がある部分。だから「うねりケア成分」の多くが、補修を軸にした設計になっているんです。
湿気でうねりが強くなる理由
ここがいちばん実感に直結する話です。オルトコルテックスとパラコルテックスは、水を吸って膨らむ度合い(膨潤率)が違います。だから湿度が高い日や髪が濡れているとき、片側だけがより大きく膨らんで、その差が「曲がる力」になる。梅雨に広がるのも、雨の日に限ってまとまらないのも、この膨らみ方の差が原因です(出典1)。
そしてもうひとつ厄介なのが、高湿度・濡れた状態で一度クセがついてしまうと、湿度が下がっても元に戻りにくいという性質。髪は濡れているあいだに形が決まって、乾く過程でその形が固定されます。つまり「乾いてから直す」より「濡れているあいだにどう扱うか」のほうが、うねり対策としてははるかに効くということです。

「濡れているあいだに形が決まる」——これを知ってから、私はお風呂上がりの放置をやめました。自然乾燥でうねうねになるのは気のせいじゃなくて、ちゃんと理由があったんですね。
くせ毛の4タイプをチェック

ひとくちに「くせ毛」と言っても、実は形の違うタイプがあります。自分がどれなのかが分かると、ケアの方向性も選びやすくなります。
波状毛/捲転毛/縮毛/連珠毛
- 波状毛(はじょうもう):S字状にゆるく波打つタイプ。アジア人にいちばん多く、「うねり毛」と呼ばれるのはたいていこれです。湿気で広がりやすいのも主にこのタイプ。
- 捲転毛(けんてんもう):毛が長い方向にねじれながら生えてくるタイプ。1本の中で光の反射がバラつくので、ツヤが出にくく感じられます。
- 縮毛(しゅくもう):強く縮れるタイプ。日本人には比較的少ないとされています。
- 連珠毛(れんじゅもう):毛の太さが数珠のように太い・細いを繰り返すタイプ。細い部分に力が集中するため、切れやすいのが特徴です。
そして「うねりに悩んでいるのは自分だけ?」という点についても、調査データがあります。ホーユー株式会社が461人を対象に行ったWEB調査では、87%の人が「髪のうねりを感じる」と回答しています(出典9)。同じ調査の解説では、毛髪の断面が真円に近いほど直毛になりやすく、だ円につぶれているほどうねりが出やすいことも紹介されています。

87%というのは、ほぼ全員と言っていい数字ですよね。うねりは「特別な悩み」ではなくて、みんなが多かれ少なかれ付き合っているもの。そう思うと、少し気が楽になりませんか。
くせ毛ケア成分は2つのタイプで読み解く
ここからは成分表の話。うねりケアをうたう成分はたくさんありますが、働き方は大きく2タイプに分けられます。この地図を持って裏面を見ると、ぐっと読みやすくなります。
①ケラチンの結合を直接補修するタイプ
ダメージで乱れたり、隙間が空いてしまった毛髪内部のケラチンに対して、成分自身が結合を作って支えにいくタイプです。特徴的なのは、熱をきっかけに結合が強くなる設計のものが多いこと。ドライヤーやアイロンの熱が、成分にとってはスイッチになるわけですね。該当するのは[アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウム](トステア®)、[γ-ドコサラクトン]、[パルミトイルジペプチド-18]あたり。
②水分の出入り・膨潤差をコントロールするタイプ
さきほど書いたとおり、うねりの直接の引き金は「水を含んだときの膨らみ方の差」です。ならば水の出入りそのものを整えれば、うねりは出にくくなるはず——という発想のグループがこちら。毛髪の表面を疎水化(水をはじきやすく)したり、水溶性の皮膜で包んだりして、湿気の影響を受けにくい状態をつくります。[ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コメタンパク]、Ashland社の[ヒドロキシプロピルグルコナミド]+[グルコン酸ヒドロキシプロピルアンモニウム]、[加水分解水添デンプン]、[イソペンチルジオール]などが入ります。
実際の製品では、この2タイプを組み合わせて配合していることがほとんどです。「補修して整える」だけでも、「水をはじく」だけでも足りないので、両方から攻める。成分表で両タイプの名前が見つかったら、うねりケアをちゃんと設計しているアイテムだと考えていいと思います。

「中を直す係」と「水をコントロールする係」の2人組。この見方を覚えておくと、知らない成分名が出てきても、どっちの役割かで見当がつくようになると思います。
注目成分ピックアップ
ここからは、研究データの中身まで踏み込んで見ていきます。「なぜ効くと言われているのか」を説明できる成分は、実はそう多くありません。
トステア®(アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウム)——神戸大学×ロート製薬の構造解析データ

くせ毛ケア成分のなかで、私がいちばん面白いと思っているのがこれです。[アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウム]、通称トステア®。神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科の辻野義雄特命教授とロート製薬の共同研究から生まれた成分です(出典4・5)。
働き方はこうです。毛髪内部でケラチンは、[中間径フィラメント]という細い繊維の束になって並んでいます。くせ毛ではこの束のねじれ・並びが乱れていて、それが「曲がろうとする力」の一因と考えられている。トステア®はこの繊維に対して、アミノ基とカルボキシ基という2つの手を使って多点で結合し、さらにドライヤーなどの熱が加わることで結合がより強固になる——という仕組みです。整えた形を熱で留めていくイメージですね。
研究で分かっていること
大型放射光施設SPring-8を用いたX線構造解析で、未処理のくせ毛は毛髪内部の中間径フィラメントのねじれ・乱れが大きいのに対し、アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウムで処理した毛髪ではその乱れが小さくなっていることが確認されました。またブリーチ毛を使った浸透試験(成分の分布を画像化するイメージングマス解析)でも、毛髪内部まで成分が届いていることが確かめられ、同じ毛束でドライヤーブロー時のうねりが改善する様子も観察されています(大学との共同研究・毛髪サンプルの機器分析/出典4・5:神戸大学 科学技術イノベーション研究科/ロート製薬 技術リリース, 2024年6月12日)。
「髪の中で何が起きているか」をここまで機器分析で見せている美容成分は、正直かなり珍しいです。ただしフェアに書いておくと、公開されているのは「乱れが小さくなった」「うねりの改善が見られた」という定性的な記述までで、何%改善したといった数値は出ていません。またヒトの頭髪を使った大規模な使用試験のデータも、私が調べた範囲では見つかりませんでした。仕組みの裏づけは強いけれど、効果の大きさは未知数——という読み方が誠実だと思います。
もうひとつ。この原料の流通名や取扱企業について、紹介サイトによって記載がまちまちで、一次情報での確定ができませんでした。「どこそこの会社の原料」と断定している情報は、少し慎重に見たほうがよさそうです。
配合されている商品では、美容室専売のヘアケアブランドを中心に「トステア配合」を前面に打ち出した展開が広がっています。たとえば「NOUNE(ノウネ)ストレート」のシャンプー&トリートメントのように、トステアの名前そのものがブランドの特徴として使われているケースが多いです(出典12)。成分表に「アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウム」と書かれていたら、この技術が使われていると考えていいと思います。

放射光施設まで使って髪の中のねじれを見にいった、というのがもう熱いです。ただ「どれくらい良くなるか」の数字は非公開。理屈は納得、実力は未知数。私はそのくらいの温度で見ています。
FiberHance BM(Ashland社)——査読論文と耐久性データを持つ海外原料
全成分表示では[ヒドロキシプロピルグルコナミド]と[グルコン酸ヒドロキシプロピルアンモニウム]という2つの名前が並んで出てきます。これは米国の原料メーカーAshland社の技術「FiberHance BM」で、2成分をセットで使うことで働く設計になっています。どちらもグルコース(糖)由来の、比較的小さな分子です。
分子が小さいのでキューティクルを越えてコルテックスの深部まで入っていき、ダメージを受けたケラチンとのあいだに新しい水素結合・イオン結合をつくって、内側から支える。糖由来で水になじみやすい性質なので、髪の中の水分環境を整える側面もあると考えられます。
研究で分かっていること
2022年に査読つき学術誌に掲載された研究では、X線結晶構造解析などを用いて、この成分がケラチンを構成するアミノ酸と結合しながらゲル状になり、毛髪の繊維に絡みつくように働く可能性が報告されています(基礎研究・査読論文/出典6:Blakeway J. et al., Crystal Growth & Design, 2022)。またメーカー公表の物性試験では、2回ブリーチしたヨーロッパ人毛髪で、繰り返し変形への耐久回数が未強化毛の約10,000回に対して約25,000回まで向上し、強度は未処理毛と比べ最大で約3倍という結果が示されています(メーカー公表の物性試験/出典7)。
査読論文とメーカー試験の両方を持っているのは、原料としてはかなり強い部類です。in-cosmetics 2017でゴールドイノベーションアワードも受賞しています。
ただし、ここは正直に書かないといけません。この耐久性・強度のデータは「ブリーチ毛がどれだけ丈夫になったか」を測ったもので、「うねりがどれだけ落ち着いたか」を測った試験ではありません。切れ毛・パサつきのケアとしての説得力は高いけれど、うねり専用のエビデンスとして受け取るのは行きすぎ。加えて、最終製品にどれくらいの濃度で入っているかは非公開なので、原料としての実力と、手元のボトルの実力はイコールではない点も頭の片隅に置いておきたいところです。
配合されている商品については、正直に書いておきます。Ashland社はヘアケアメーカー向けに技術提供を行う原料会社で、今回の調査では日本国内で販売されている具体的なブランド名までは確認できませんでした。成分表に[ヒドロキシプロピルグルコナミド]と[グルコン酸ヒドロキシプロピルアンモニウム]が並んで書かれていたら、この技術が使われているサインです。

10,000回→25,000回は、素直にすごい数字だと思います。ただ測っているのは「丈夫さ」であって「うねり」ではないんですよね。ブリーチやカラーでダメージが積み重なっている人ほど、恩恵を感じやすい成分かなと。
Promois® WR-CAQ——うねり改善に特化した国産の新原料
成分名は[ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コメタンパク]。長いですが、分解すると「コメ由来のタンパク質を、プラスに帯電するよう加工したもの」です。株式会社成和化成が2024年4月に発表した、うねり改善を正面から掲げて開発された原料で、このテーマにいちばんダイレクトに合致する成分だと思います(出典8)。
面白いのが2段構えの仕組みです。ダメージを受けた髪の表面はマイナスに帯電しているので、プラスに帯電したこの成分は傷んだ部分を狙って吸着します。そのうえでタンパク質部分がダメージを補修し、さらに分子についた長い油性の鎖(高級アルキル鎖)が髪の表面を疎水化して、水の出入りをコントロールする。前の章で書いた「①補修」と「②水分コントロール」を、1つの分子で両方やっているわけですね。
ただし現時点で公開されているのはメーカーのプレスリリース情報が中心で、試験方法や改善率といった具体的な数値までは示されていません。2024年発売とまだ新しい原料なので、これからデータや採用製品が増えていくのを見守りたいところです。
配合されている商品については、発売から日が浅いこともあり、今回の調査では具体的な採用ブランド名までは確認できませんでした。コンディショナー・トリートメント・ヘアミストなど幅広い剤形で使える設計とされているので、今後パッケージの成分表で見かける機会が増えていきそうです。

「傷んだところだけを狙って吸着して、そこにフタをする」という設計、よくできてるなと思います。まだ数字は出ていないけれど、うねり専用に作られた成分というだけで期待したくなる新顔です。
γ-ドコサラクトン/パルミトイルジペプチド-18 など、成分表でよく見る補修成分
うねりケアをうたうアイテムで名前を見かけやすい成分も、あわせて整理しておきます。ここはエビデンスの手触りが少し違うので、そこも含めて正直に書きますね。
[γ-ドコサラクトン](エルカラクトン)は、ナタネ由来のラクトン化合物。日本精化が開発した毛髪用の成分で、熱をきっかけに毛髪ケラチンのアミノ基(主にリシン残基)と共有結合をつくり、ダメージで空いた穴を埋めてキューティクルを整列させると説明されています。共有結合なのでシャンプーしても落ちにくい持続型、という点が売りです(出典10)。ただ、この機序を裏づける査読つき論文や、改善率・試験人数といった具体的な数値は、今回の調査では確認できませんでした。メーカーの公式資料も画像主体のPDFで中身の一次確認ができていません。仕組みの説明はメーカーが一貫して発信しているものの、うねり改善の効果については「メーカー・美容メディアの紹介ベース」という整理になります。配合先は幅広く、「ヒートケア成分配合」「熱反応型」をうたうアウトバストリートメント・洗い流すトリートメント・ヘアパック・カラートリートメントなど、様々なカテゴリの商品で使われています(出典13)。
[パルミトイルジペプチド-18](ナノファイバージェル®)は、日産化学が開発したアミノ酸とパルミチン酸からつくられる成分。キューティクル同士を接着して水の出入りを管理している[細胞膜複合体(CMC)]を整えることで、水分が出入りしすぎるのを防ぎ、ハリ・コシを保つと説明されています。ほかの補修成分の浸透を助ける役割もあるそうです(出典11)。こちらも安全性試験の情報は確認できましたが、うねり改善そのものを定量評価した試験データは見つかりませんでした。「なぜ配合されているか」は説明できるけれど、効果の大きさを示すデータはまだ、という段階です。配合例としては「ナノファイバージェル配合」をうたうシャンプー・コンディショナーが複数あり、「NIJI(ニジ)リズミック シャンプー」などはこの成分の配合を前面に打ち出した商品です(出典14)。
[加水分解水添デンプン]はデンプンを分解して水素を付加した糖アルコール系の保湿成分で、キューティクルの損傷部分を水溶性の皮膜で包んで保湿・補修します。[イソペンチルジオール]は保湿・可溶化・防腐のバランスに優れた多機能原料で、グリセリンと併用するとベタつきを抑えつつ保湿力を保てるのが利点。どちらもうねり専用に開発された成分ではなく、処方全体を支える汎用の保湿・皮膜成分という位置づけです。これらの名前があるからうねりに効く、という読み方はしないほうがいいと思います。特定のブランドに紐づく成分というよりは、シャンプー・コンディショナー・トリートメントを問わず幅広い市販品の成分表で見かける、処方の縁の下の力持ち的な存在だと考えてください。

「機序の説明はしっかりあるけど、効果の数字は非公開」——うねりケア成分は、正直このパターンがとても多いです。悪いことではないけれど、広告の言葉をそのまま鵜呑みにしない材料にはなると思います。
結局、くせ毛は成分で直るの?
いちばん知りたいところだと思うので、正直に書きます。くせ毛そのものを、化粧品の成分で直毛に変えることは基本的にできません。理由はここまで読んでいただいたとおりで、うねりの本体が毛髪内部のコルテックスの分布の偏りにあるからです。分布そのものは毛が作られる段階で決まるので、外から塗って並べ替えるようなものではありません。
美容室の縮毛矯正が「直る」のは、まったく別の技術だからです。あちらは薬剤で髪の内部の結合を一度切って、熱でまっすぐな形に整えてから結合をつなぎ直すという、化学変化を伴う施術。だから直毛になるかわりに髪への負担も大きいわけですね。日々のヘアケア成分がやっているのは、それとは違うアプローチです。
ではケア成分に意味がないかというと、そんなことはまったくありません。できるのは次の3つです。
- 後天的に増えた分のうねりを立て直す:ダメージで乱れたケラチンを補修することで、傷みによって強くなっていたうねりは落ち着く余地があります。
- 湿気に振り回されにくくする:水の出入りをコントロールできれば、膨らみ方の差が抑えられて、日によるブレが小さくなります。
- 整えた形を保ちやすくする:熱で結合するタイプの成分は、ブローで整えた状態を留める方向に働きます。
「直毛にする」ではなく「うねりにくい状態を保つ・扱いやすくする」。この言い換えができると、成分選びで失望することがぐっと減ると思います。

くせ毛は「治す」ものというより「付き合いやすくする」もの。そう決めてから、私はヘアケア選びがすごく楽になりました。毎朝のブローが5分短くなるだけでも、十分な成果だと思うんです。
選び方・使い方の注意
熱を使うスタイリングとの相性
ここは知っておくと得をするポイントです。トステア®やγ-ドコサラクトンは、熱が加わることで髪との結合が強くなる設計になっています。つまりこれらを配合した洗い流さないトリートメントは、つけたあとにドライヤーやアイロンを使ってこそ本領を発揮するタイプ。「熱は髪に悪いから自然乾燥にしている」という使い方だと、せっかくの設計を活かしきれません。
逆に言うと、洗い流さないトリートメントを買うときは、自分が毎日ドライヤーを使うかどうかで選ぶ成分が変わるということでもあります。しっかり乾かす習慣がある人は熱反応型を、あまり熱を使わない人は水分コントロール型(コメ由来のカチオン化タンパクなど)を軸に選ぶと、噛み合いがよくなると思います。
濡れている・湿度が高いときのケアが特に重要

髪は濡れているあいだに形が決まり、乾く過程でその形が固定されます。だからうねり対策でいちばん効くのは、実は朝のスタイリングよりも「夜の乾かし方」だったりします。
気をつけたいのは次の3つです。ひとつめは濡れたまま放置しないこと。半乾きの時間が長いほど、髪は好き勝手な形で固まっていきます。ふたつめは根元から乾かすこと。うねりは根元の生えぐせから始まることが多いので、ここを立ち上げながら乾かすと毛先の広がりも収まりやすくなります。3つめは仕上げに冷風。温風で整えた形は、冷えるときに定着します。
夜のヘアケアをどう設計するかという視点では、就寝中の摩擦や乾燥まで含めて考えられた製品もあります。実際の商品でどんな成分設計になっているかは、YOLU カームナイトリペア シャンプーの成分解析記事もあわせて読んでみてください。
🙆♀️ 向いていそうな人
- 湿気の日に広がる・朝のブローに時間がかかる、いわゆる波状毛タイプの人。うねりケア成分がいちばん力を発揮しやすい領域です。
- カラーやブリーチを繰り返していて、ここ数年でうねりが強くなった実感がある人。補修型の成分と噛み合います。
- 毎日ドライヤーでしっかり乾かす習慣がある人。熱で結合するタイプの設計を活かせます。
🔍 確認しておきたい人
- 生まれつき強い縮毛で「直毛にしたい」人。成分ケアの守備範囲を超えるので、美容室での施術のほうが目的に合います。
- 「〇〇配合」の文字だけで選びたい人。うねりケア成分は効果の数値が非公開のものが多く、配合の有無だけでは実力を測れません。
- 連珠毛タイプで切れ毛が多い人。うねりよりまず、毛髪強度を支えるダメージケアを優先したほうが近道です。

成分選びと同じくらい、乾かし方が効きます。というより、どんなに良い成分を塗っても濡れっぱなしで寝たら台無し。まずは夜の10分を変えるのがいちばん確実だと思います。
よくある誤解
Q. くせ毛用シャンプーを使い続ければ、いつか直毛になりますか?
A. 残念ながら、そこまでは期待できません。うねりの本体は毛髪内部の細胞の分布の偏りで、これは毛が作られる段階で決まるものだからです(出典1)。くせ毛用のアイテムができるのは、ダメージで上乗せされたうねりを立て直すことと、水分の出入りを整えて広がりにくくすること。「直毛になる」ではなく「扱いやすくなる」が現実的なゴールだと思います。
Q. うねりは全部ダメージのせいですよね?
A. そうとは限りません。生まれつきの毛の形(先天的な要因)が主な原因のこともあります。巻き毛の遺伝を扱った総説でも、髪のカールの強さに複数の遺伝子が関わることが報告されています(出典3)。ただ、加齢や紫外線・繰り返しのカラーであとから増えた分もあって、そこは補修でアプローチできる余地があります。「全部ダメージ」でも「全部遺伝」でもなく、両方が重なっていると考えるのが実態に近いです。
Q. 髪に熱はよくないから、うねりケアでもドライヤーは控えるべき?
A. うねりに関しては、むしろ逆です。濡れているあいだに形が決まってしまうので、自然乾燥のほうがうねりは出やすくなります。さらにトステア®やγ-ドコサラクトンのように、熱をきっかけに髪と結合するタイプの成分もあるので、これらを使うならドライヤーはセットで考えたほうが理にかなっています。もちろん至近距離で当て続けるのは別問題なので、少し離して手早く乾かすのがいいと思います。
Q. 高価なうねりケア製品ほど効きますか?
A. 一概には言えません。ここまで見てきたとおり、多くのうねりケア成分は最終製品での配合濃度が非公開で、原料としてのデータと手元のボトルの実力は別物です。ただ、原料そのものが新しく高価なもの(トステア®やコメ由来の新原料など)を軸に据えている製品は、価格が上がりやすい傾向はあります。値段の差が配合設計の差を示している可能性はありますが、それも確実ではない、というのが正直なところです。

「くせ毛は治らない」と聞くとがっかりするかもしれませんが、裏を返せばやることがはっきりしているということでもあります。補修して、水分を整えて、乾かし方を変える。この3つだけです。
まとめ
くせ毛・うねり毛の正体は、毛髪内部にある性質の違う2種類の細胞(オルトコルテックス/パラコルテックス)の分布の偏りでした。水を含んだときの膨らみ方に差が出ることで髪が曲がり、しかも濡れている状態でついたクセは乾いても戻りにくい。これが、湿気の日にどうにもならなくなる理由です(出典1)。
この仕組みに対して、いまのヘアケア成分は2方向からアプローチしています。ひとつはケラチンの結合を補修する方向(トステア®、γ-ドコサラクトン、パルミトイルジペプチド-18)。もうひとつは水分の出入りをコントロールして膨潤差を抑える方向(FiberHance BM、コメ由来のカチオン化タンパクなど)。成分表をこの2軸で読むと、そのアイテムがどんな設計思想なのかが見えてきます。
エビデンスの手触りにも、はっきり差がありました。トステア®は大学との共同研究でX線構造解析まで行い、FiberHance BMは査読論文とメーカー物性試験の両方を持っています。一方で、γ-ドコサラクトンやパルミトイルジペプチド-18のように、機序の説明はしっかりあっても効果の数値が公開されていない成分も多い。「仕組みが分かっていること」と「どれだけ変わるか」は別の話——これがくせ毛ケア成分の正直な現在地だと思います。
そして最後にもうひとつ。どんな成分を選んでも、濡れた髪をどう乾かすかの影響はとても大きいです。成分の力を借りながら、夜の乾かし方を少しだけ変えてみる。くせ毛と気持ちよく付き合うには、たぶんこの組み合わせがいちばんの近道だと思います。

くせ毛は、直すものではなくて整えるもの。そう分かってからは、髪のことでイライラする時間が減りました。今日のブローが少し楽になる、その積み重ねでいいんだと思います。
参考文献・出典
- 花王株式会社 ヘアケアサイト「うねり毛の増加と、ツヤ・まとまりにくさ」(コルテックスの分布の偏り・膨潤差・加齢による変化)https://www.kao.com/jp/haircare/hair/4-3/
- 花王株式会社 プレスリリース(2007年3月19日/大型放射光施設SPring-8での毛髪内部構造の解析発表)http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2007/070319-1/
- Westgate GE, Ginger RS, Green MR. “The biology and genetics of curly hair.” Experimental Dermatology. 2017;26(6):483-490.(総説)doi:10.1111/exd.13347
- 神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科 ニュース(2024年6月12日/辻野義雄特命教授とロート製薬の共同研究)https://www.stin.kobe-u.ac.jp/info2/2024_06_24_01.html
- ロート製薬株式会社 技術リリース(2024年6月12日/SPring-8によるIFの乱れ幅の比較、ブリーチ毛への浸透試験。定量的な改善率の記載はなし)https://www.rohto.co.jp/research/researchnews/technologyrelease/2024/0612_01/
- Blakeway J, et al. “Understanding the Interaction of Gluconamides and Gluconates with Amino Acids in Hair Care.” Crystal Growth & Design. 2022.(査読つき基礎研究)doi:10.1021/acs.cgd.2c00753
- Personal Care Magazine「Prevention of hair damage during multiple bleachings」(Ashland社 FiberHance BM の物性試験データ/メーカー公表)https://www.personalcaremagazine.com/story/26163/prevention-of-hair-damage-during-multiple-bleachings
- 株式会社成和化成 プレスリリース「髪のうねり改善に特化したコメ由来のヘアケア原料を開発」2024年4月23日/PR TIMEShttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000100162.html
- ホーユー株式会社 プレスリリース「【髪のうねりに悩む人87%】季節の変わり目に約半数が実感する”うねり”対策&スタイリングのコツをご紹介!」2025年3月5日/PR TIMES:461人対象のWEB調査(2025年1月16日〜30日実施)。「髪のうねりを感じる」87%、毛髪断面の形状とうねりの関係について解説https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000152.000055092.html
- 日本精化株式会社 公式資料「エルカラクトン(γ-ドコサラクトン)」https://www.nipponseika-cosme.com/pdf/brands/Erucalactone.pdf(メーカー資料。PDFが画像主体のため一次内容の確認は未了。査読論文・定量データは確認できていません)
- 日産化学株式会社「ナノファイバージェル®(パルミトイルジペプチド-18)」製品資料https://www.nissanchem.co.jp/products/advance/pdf/nfg-haircare.pdf(メーカー資料。PDFが画像主体のため一次内容の確認は未了。機序の説明は原料代理店による紹介記事を併せて参照)
- NOUNE(ノウネ)公式ブランドページ(トステア配合 形状記憶髪質改善 ストレート シャンプー&トリートメント)https://www.kenko-sakas.com/brand/noune/
- 株式会社ラエナ「ヘアサロンで注目のヒートケア成分『γ-ドコサラクトン(エルカラクトン)』」(配合カテゴリの紹介、美容メディア)https://laena-beauty.jp/gamma-docosalactone/
- NIJI(ニジ)リズミック シャンプー 公式販売ページ(ナノファイバージェル配合)https://www.kenko-sakas.com/SHOP/4990266635503.html

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