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2026年3月1日、シスレーから「ブラックローズ コンセントレート ラディアンス セラム」が登場しました。30mLで税込40,700円(出典3・出典6)。ブラックローズコレクションの美容液で、届いてすぐ使えるのではなく、使い始めるときに自分でパッケージを“起動”させる2剤式という、ちょっと珍しい仕立ての一本です。
シスレーがこの製品でいちばん語っているのは、配合成分の数ではありません。注目してほしいのは「ブラックローズ モレキュラー エキス」という独自成分です。1年のうちわずか1ヶ月しか収穫できない希少なバラ「ブラックバカラローズ」の花びらから、100回以上の抽出試験を重ねて2年以上かけて開発したというアントシアニン抽出物なんです(出典3・出典4)。
4万円台という価格帯だけに、「なんとなく良さそう」で決めたくない方が多いと思います。今回はまずメーカーが何を言っているのかを整理して、そのうえで全成分表から確認できることと研究で分かっていることを順番に見ていきますね。独自成分には確定していない部分もあるので、そこも隠さずにお話しします。
ひとことで言うと

主役は独自成分「ブラックローズ モレキュラー エキス」。希少品種ブラックバカラローズの花びらから採ったアントシアニン抽出物で、全成分表では[ROSA HYBRID FLOWER EXTRACT]にあたる可能性が高い成分です(公式にINCI名の対応表示がないため、ここは成分表からの読み取りになります)。処方は抗酸化(バラのアントシアニン)と抗炎症(ビタミンB12・海藻エキス)の二本立てで、開封まで中身を分けておく2剤式パッケージも、酸化しやすいアントシアニンを守るという意味で理屈が通っています。香りごと楽しむラグジュアリーな一本ですが、精油由来の香気成分が多いので、香料アレルギーが心配な方は先に確認してくださいね。
このアイテムのポイント
- 独自成分「ブラックローズ モレキュラー エキス」は、1年に1ヶ月しか収穫できないブラックバカラローズの花びら由来。産地・品種・抽出試験の回数まで開示しているのは、化粧品ではなかなか珍しいことだと思います(出典3・出典4)。
- 開封まで中身を分けておく2剤式パッケージ。アントシアニンが光・酸素・pHの変化に弱いという性質への対策で、設計の理屈は通っています(出典4)。
- [シアノコバラミン](ビタミンB12)は外用でのヒト臨床データがある成分。派手さはありませんが、抗炎症側を担う裏づけのある一手です(出典9)。

この3つ、ぜんぶ「バラのアントシアニンをいかにフレッシュなまま肌に届けるか」という一本の線でつながっています。成分・パッケージ・組み合わせの3方向から同じゴールを狙っている処方だと読むと、いちばんスッキリすると感じています。
基本情報

| ブランド | シスレー(Sisley Paris) |
| 価格・容量 | 40,700円(税込)/30mL |
| 発売日 | 2026年3月1日 |
【はじめての方必読】当サイトの成分解析について
- 成分解析は各成分の一般的な配合目的を記載したもので、製品の効果効能を保証するものではありません。
- リニューアル等により全成分が変更される可能性があります。見つけた場合はお問い合わせフォームから教えて頂けると助かります。
メーカーが強く謳う3つの独自訴求
シスレーはこの美容液を、「サイレント セルラー エイジング(沈黙の細胞老化)」、つまり自覚のないまま静かに進む肌の変化にアプローチする一本として打ち出しています。ブラックローズコレクション共通のコンセプトとして、アントシアニンが乾燥や外的ストレスから肌を守るという説明もされています(出典5)。まずは、メーカーが具体的に何を公表しているのかを3つに整理して見ていきますね。
「ブラックローズ モレキュラー エキス」──希少バラを100回以上抽出した独自成分
この製品の核として名指しされているのが、「ブラックローズ モレキュラー エキス」(Black Rose molecular extract)です。原料は「ブラックバカラローズ」という深い赤黒色のバラで、公式によると1年のうちわずか1ヶ月しか収穫できない希少な品種(出典3)。その花びらから、100回以上の抽出試験と2年以上の研究期間をかけてこの独自エキスにたどり着いた、と説明されています(出典4)。
ここで正直にお伝えしておきたいことが、ひとつあります。産地についての説明が、言語によって違うのです。日本語版の公式情報では「南仏で収穫される」となっているのに対し(出典3)、英語版の公式サイトでは「フランス西部・アンジュー地方で栽培されたブラックバカラローズ」と書かれています(出典2)。どちらが正確なのかまでは、今回は確認が取れませんでした。ここは事実としてそのままお伝えしておきますね。
では、この「モレキュラー エキス」は全成分表のどこにいるのでしょうか。実は公式には、どのINCI名(成分表示名)がこの独自エキスにあたるのかの記載がありません。全成分表を見ていくと、バラ由来と読める成分は[ROSA CENTIFOLIA FLOWER WATER](センティフォリアバラ花水・2番目)、[ROSA HYBRID FLOWER EXTRACT](バラ花エキス・11番目)、[ROSA DAMASCENA FLOWER OIL](ダマスクバラ花油・17番目)の3つ。このうち花水は水蒸気蒸留水、花油は香りづけの精油ですから、消去法でも、ブラックバカラローズがハイブリッドティー系の品種であることからも、[ROSA HYBRID FLOWER EXTRACT]が該当する可能性が高いと考えられます。ただし公式の裏づけがないので、これはあくまで成分表からの読み取りです。
肝心の中身はアントシアニン。ブルーベリーや紫キャベツの色のもとにもなっている、あの赤紫色のポリフェノールです。バラの花弁アントシアニンについては、近縁種を使った第三者の研究がいくつか出ています。
研究で分かっていること
バラ花弁エキス(Rosa gallica)を使った培養細胞の実験では、炎症のスイッチを入れるMAPKという情報伝達の流れを抑えることで、肌の炎症反応が和らぐことが報告されています(出典8)。また、バラ花弁エキス由来のアントシアニン代謝物が紫外線による光老化を抑えたという研究もあり、コラーゲンの材料となるCOL1A1というたんぱく質の減少を食い止める働きが示されています(出典7)。※どちらもブラックバカラローズそのものではなく近縁種のバラを使った研究で、後者はマウスへの経口投与とヒト培養細胞の実験です。塗るスキンケアにそのまま当てはめられるデータではありません。
つまり「バラの花弁アントシアニンには、抗炎症・光老化を抑える方向のはたらきが報告されている」ところまでは研究が積み上がっている一方、ブラックバカラローズ由来のこのアイテム原料そのものを第三者が評価したデータは公開されていない、というのが現在地です。とはいえ、品種名も収穫の難しさも抽出試験の回数も具体的に出してくるブランドはそう多くありません。原料へのこだわりは、数字の出し方からしっかり伝わってきます。品種・産地・抽出試験の回数まで開示するのは、植物由来の独自成分を訴求するコスメに共通する、原料そのものに価値を持たせる作り方です。

アントシアニン=「色の濃い植物の抗酸化成分」と覚えておけば十分です。理論の裏づけはある成分なので、ブラックバカラローズならではの上乗せ分が数字で見えるようになったら、もっと面白くなりそうだなと思っています。
2剤式パッケージ──デリケートなアントシアニンを守る設計

もうひとつメーカーが押しているのが、パッケージそのものです。この美容液は開封(アクティベーション)まで中身を分けた状態で保っておき、使い始めるときに成分を活性化させる2剤式。そこから6ヶ月間、成分の鮮度と効果を保つ設計だと説明されています(出典3・出典4)。
なぜそこまでするのか。理由も公式にはっきり書かれていて、「抽出されたアントシアニンは、光や酸素、pHの変化に対してきわめてデリケート」だからだそうです(出典4)。ここは化学的にも納得できる話で、アントシアニンは酸性側では赤く、中性〜アルカリ性側では紫〜青へと色が変わり、光や酸素に長くさらされると退色していく色素として知られています。ジャムや果汁の色が時間とともにくすんでいくのと同じことが、ボトルの中でも起こりうるわけですね。
つまりこの2剤式は、見た目の演出ではなく「①のブラックローズ モレキュラー エキスを守るための入れ物」という位置づけです。せっかく100回以上の抽出試験で取り出した成分が、店頭に並んでいる間に色あせてしまっては元も子もありません。主役の成分の弱点から逆算してパッケージを設計しているという意味で、設計思想としてはとても筋が通っていると思います。ただし「6ヶ月間、鮮度が保たれる」という部分を第三者が測定したデータは、今回は見つけられませんでした。

「ひと手間かけさせる容器」って敬遠されがちなんですが、この製品の場合は中身の都合が先にあるタイプ。アクティベートしたら6ヶ月が目安なので、時々しか使わないより、朝晩しっかり使い切るほうが向いている一本ですね。
自己評価試験の数値と、それを支える複合処方

公式サイトには、なかなか目を引く数字が並んでいます。「ふっくらとしたハリ感 +105%」「なめらかでキメ細やか +74%」「バラ色のツヤ +125%」「内なる輝き +132%」(出典1)。ここは数字だけを見て判断すると誤解しやすいところなので、条件までセットで押さえておきたいところです。
英語版の公式サイトには試験条件が書かれていて、「30名の女性が1日2回、2ヶ月間使用したあとの自己評価」とあります(出典2)。一方、日本語版は「即時/1ヶ月後/2ヶ月後」という時系列の表記のみで、対象人数の記載は見当たりませんでした(出典1)。同じ数字でも、言語によって開示の細かさに差があるということですね。
この「自己評価(self-assessment)」というのは、使った本人が「良くなったと感じるか」をアンケートで答える形式です。機器で肌を測定した数値でも、プラセボと比べた試験でもありません。ですので「+105%」は肌のハリが2倍になったという意味ではなく、そう感じた人の実感スコアが伸びた、という読み方になります。メーカー主催の使用感アンケートとして、目安に受け取るのがちょうどいいと思います。
そのうえで、この体感を支える処方として公式が名指ししているのが、ブラックローズ モレキュラー エキスに加えた「シーロックウィード エキス」(海藻由来・鎮静)と「ビタミンB12」の組み合わせです(出典2・出典4)。全成分表では、それぞれ7番目の[ASCOPHYLLUM NODOSUM EXTRACT]と13番目の[CYANOCOBALAMIN]にあたります。抗酸化をバラのアントシアニンが、抗炎症を海藻とビタミンB12が担うという役割分担で、次の章で詳しく見ていきますね。

数字が大きいと「すごい試験をしたんだ」と思ってしまいがちですが、自己評価アンケートは「使った人がどう感じたか」の記録。悪いものではなくて、読み方さえ間違えなければ立派な参考情報です。むしろ試験条件をきちんと書いている英語版のほうが、私は好印象でした。
配合目的別に見る38成分
ここからは全38成分を、配合目的ごとに4つのグループに分けて見ていきます。全成分表示は原則として配合量の多い順(1%以下の成分は順不同でも可)なので、上位に来ている成分ほど配合量が多い可能性が高いという前提で読んでいきますね。
訴求の核となる保湿・整肌成分(7〜14番目)

ベースと保湿の土台を過ぎた7〜14番目に、この製品の訴求成分がまとまって並んでいます。香りをつくる精油(15〜17番目)や、増粘剤・乳化剤といった処方基材(18番目以降)よりも前にそろっているのが特徴です。
- [ASCOPHYLLUM NODOSUM EXTRACT](ヒバマタエキス=シーロックウィード エキス・7番目)……メーカーが名指ししている鎮静担当。北大西洋の岩場に育つ褐藻で、フコイダンをはじめとする多糖体やポリフェノールを含むことで知られています。海藻由来のフコイダンは炎症を落ち着かせる方向の研究が積み重なっている素材群で、この製品では「静かな炎症」へのケアを引き受けていると考えられます。
- [SODIUM HYALURONATE](ヒアルロン酸Na・8番目)……説明不要の保湿の定番。角層の表面に水分を抱え込みます。分子量によって働きが変わる成分ですが、このセラムでは分子量までは公表されていません。
- [BIOSACCHARIDE GUM-1](バイオサッカライドガム-1・9番目)……発酵由来の多糖類で、肌の上に薄い膜をつくって水分の蒸発を抑えるタイプの保湿成分。原料メーカーの資料では、ヒアルロン酸Naが塗った直後の速いうるおいに強いのに対し、こちらは時間が経ってからの持続的な保湿に強みがあるとされています(原料メーカーの試験データで、査読論文ではありません)。ヒアルロン酸Naとすぐ隣に並んでいるのは、この時間差を狙った組み合わせだと考えられます。
- [CITRUS LIMON (LEMON) FRUIT EXTRACT](レモン果実エキス・10番目)……ビタミンCやエリオシトリン・ヘスペリジンといったフラボノイドを含み、抗酸化のはたらきや、メラニンをつくる酵素チロシナーゼを抑える方向の報告がある素材です(出典10)。「輝き」という訴求を後押しする位置づけと考えられます。人工的に安定化させたビタミンC誘導体とは異なり、果実由来のビタミンCとフラボノイドによる複合的な抗酸化サポートという位置づけです。
- [ROSA HYBRID FLOWER EXTRACT](バラ花エキス・11番目)……前章のとおり、「ブラックローズ モレキュラー エキス」にあたる可能性が高いと読める成分です(公式のINCI対応表示はないため確定ではありません)。
- [VITIS VINIFERA (GRAPE) LEAF EXTRACT](ブドウ葉エキス・12番目)……ブドウの葉に含まれるポリフェノール類(レスベラトロール系化合物を含むことで知られる系統)を利用した抗酸化成分。バラのアントシアニンと同じ「抗酸化」チームです。
- [CYANOCOBALAMIN](シアノコバラミン=ビタミンB12・13番目)……この製品でいちばん見落とされそうで、いちばん裏づけのある成分。下で詳しく見ます。
- [HYDROLYZED VEGETABLE PROTEIN](加水分解野菜タンパク・14番目)……植物由来のタンパク質を細かく切ったもの。肌なじみやしっとり感を整えるコンディショニング成分です。
ビタミンB12について、もう少し。「化粧品に入っているビタミンB12」と聞いてもピンとこない方が多いと思うのですが、実はこの成分、肌に塗ったときのヒト臨床試験がきちんと存在します。
研究で分かっていること
49名を対象にした8週間のプラセボ対照ランダム化比較試験で、ビタミンB12を配合したクリームを塗った側でアトピー性皮膚炎の症状が有意に改善したと報告されています(出典9)。※アトピー性皮膚炎の患者さんを対象にした試験で、エイジングケアの効果を示したものではありません。ただしビタミンB12そのものに、肌の上で炎症を落ち着かせる方向のはたらきが期待できる根拠としては参考になります。
この試験は、体内で炎症を広げる一酸化窒素(NO)をビタミンB12が受け止めることで炎症が和らぐ、というメカニズムを想定して組まれたものでした。抗酸化はバラのアントシアニンとブドウ葉・レモンが、抗炎症は海藻エキスとビタミンB12が担うという役割分担です。「サイレント セルラー エイジング」という切り口に対して、成分表からもきちんと二本立ての設計が読み取れます。

この処方でいちばん感心したのはビタミンB12でした。華やかさはないけれど、外用で人を対象にした比較試験がある成分って、実はそんなに多くないんです。目立つのは独自エキスですが、足元を固めているのはこの子だとみています。
ベース・保湿成分(1〜6番目、25番目)
- [AQUA/WATER/EAU](水・1番目)……処方の土台。
- [ROSA CENTIFOLIA FLOWER WATER](センティフォリアバラ花水・2番目)……バラの花を水蒸気蒸留したときに得られる芳香蒸留水です。ここで押さえておきたいのは、「〜水(Water)」と「〜エキス(Extract)」は化粧品成分としては別物だということ。花水は成分を濃縮した抽出物ではなく、香りと保湿を兼ねた基材として使われます。水の次に多いという配合位置は、シスレーらしい香りへのこだわりの表れだと思います。
- [PROPANEDIOL](プロパンジオール・3番目)……植物由来のものが多い多価アルコール。保湿しながら、他の成分を溶かし込む溶剤としても働きます。
- [GLYCERIN](グリセリン・4番目)……保湿成分の大定番。角層に水分を引き寄せて保ちます。
- [ALCOHOL DENAT.](変性アルコール・5番目)……上位に来ているので、後ほど「気になる点」でもう一度取り上げます。使用感を軽くしたり、清涼感を出したり、植物エキスや精油を溶かし込んだりと、この処方では働き場所が多い成分です。
- [PENTYLENE GLYCOL](ペンチレングリコール・6番目)……保湿と、防腐剤のはたらきを底上げする防腐サポートを兼ねる成分。
- [BUTYLENE GLYCOL](BG・25番目)……こちらも保湿・溶剤の定番。この位置なら、ごく少量の調整目的と考えられます。
香りを構成する精油とアレルゲン表示成分(15〜17番目、30〜38番目)
公式によると、香りはローズ・マグノリア・ゼラニウムのエッセンシャルオイルによるブラックローズコレクション共通のフローラルフレグランス(出典2)。それが成分表にもそのまま現れています。
- [MICHELIA ALBA LEAF OIL](ハクモクレン葉油・15番目)……マグノリアの香りを担う精油。
- [PELARGONIUM GRAVEOLENS OIL](ニオイテンジクアオイ油=ゼラニウム油・16番目)……ローズに似た甘い香りをもつ精油。
- [ROSA DAMASCENA FLOWER OIL](ダマスクバラ花油・17番目)……いわゆるローズオイル。香料としてはとても高価な部類の精油です。
- [PELARGONIUM GRAVEOLENS FLOWER OIL](ニオイテンジクアオイ花油・31番目)……ゼラニウムの花から採った精油。
- [LINALOOL][CITRONELLOL][GERANIOL][BETA-CARYOPHYLLENE][CITRAL][PINENE][TERPINEOL][GERANYL ACETATE](30〜38番目)……いずれも精油に天然に含まれている香気成分で、香料として別に足したものというより、上の精油からそのまま入ってきた成分です。EUの化粧品規則で、一定濃度を超えると個別表示が義務づけられている香料アレルゲンにあたります。
成分表の後半にこの手の香気成分が8種類並んでいるのは、それだけ天然精油をしっかり使っているということでもあります。香りを楽しみたい人には魅力ですが、香料でトラブルが出たことがある方には確認ポイントになるので、後半でもう一度触れますね。

アレルゲン表示成分がずらっと並ぶと不安になりますが、これは「合成香料をたくさん盛った」のではなく「天然の精油に元から入っている成分をきちんと開示している」という話。隠さず出してくれているぶん、判断はしやすいと思います。
剤形を支える処方基材(18〜29番目)
- [POLYGLYCERYL-10 STEARATE]/[POLYGLYCERYL-10 OLEATE](18・20番目)……ポリグリセリン系の乳化剤。水と油をなじませる役目で、比較的マイルドなタイプとして使われることが多い成分です。精油や脂溶性の成分を処方に収めるのに欠かせません。
- [GLYCERYL CAPRYLATE/CAPRATE](19番目)……乳化を助けながら、防腐サポートも兼ねる成分。
- [MALTODEXTRIN](マルトデキストリン・21番目)……でんぷん由来の多糖。テクスチャーの調整や、エキス類を安定に保つ担体として使われます。
- [CELLULOSE GUM]/[CARBOMER](22・23番目)……増粘・ゲル化剤。美容液のとろみをつくっているのはこの2つです。
- [SODIUM CITRATE]/[CITRIC ACID](24・26番目)……クエン酸とその塩でpHを調整するペア。アントシアニンは酸性・中性・アルカリ性で色も安定性も変わる色素なので、この処方ではpHの管理そのものが主役成分を守る仕事になっていると考えられます。
- [ALGIN](アルギン・27番目)……海藻由来の増粘・皮膜成分。7番目のヒバマタエキスと同じ海藻由来ですが、こちらは感触づくりの担当です。
- [SODIUM BENZOATE]/[POTASSIUM SORBATE](28・29番目)……防腐剤。パラベンやフェノキシエタノールを使わない処方で、よく組み合わせて使われるペアです。
ここで面白いのは、pH調整のクエン酸ペアが「ただの裏方」ではないところです。2剤式パッケージで光と酸素からアントシアニンを守り、処方の中ではpHで守る。容器と処方の両方で同じ成分を守りにいっているのが、この製品の作りだと読めます。

裏方の成分まで見ていくと、「主役をどう守るか」で一本筋が通っているのが分かります。成分表は、その会社が何を大事にしているかの設計図。こういう読み方ができると、ちょっと楽しくなってきませんか。
正直に気になる点
- [ALCOHOL DENAT.](変性アルコール)が5番目……全成分の上位数個は1%以上配合されている可能性が高い位置です。この処方では精油や植物エキスを溶かし込む器として、また使用感を軽く仕上げるために必要とされているのだと思いますが、アルコールでピリつきを感じたことがある方・乾燥が強い方は、慎重に試したいポイントです。
- 精油由来の香気成分が8種類……ローズ・マグノリア・ゼラニウムの天然精油をしっかり使っている裏返しでもあります。香水や香りつきコスメでかゆみ・赤みが出たことのある方は、いきなり顔に使わず腕の内側で試してからにしてください。
- 「+105%」などの数値はメーカーの自己評価アンケート……30名が2ヶ月使ったあとの実感を答えたもので(出典2)、機器測定でもプラセボ対照でもありません。数字の大きさをそのまま効果の強さとして受け取らないのがフェアな読み方だと思っています。
- 原料の産地の説明が言語で食い違っている……日本語版は「南仏」(出典3)、英語版は「アンジュー地方(フランス西部)」(出典2)。どちらが正確かは確認できませんでした。原料の希少性を売りにしている製品だけに、ここは統一されているとうれしいところです。
- このアイテム原料そのものの第三者データは公開されていない……バラの花弁アントシアニンについては近縁種での研究がありますが、ブラックバカラローズ由来のこのエキスを外部機関が評価したデータは見当たりませんでした。独自性の根拠は、現時点ではメーカーの公表内容ということになります。

欠点をあげつらいたいわけではなくて、4万円を出す前に知っておきたいことを並べました。とくにアルコールと香りの2つは、体質によってはっきり相性が出るところ。カウンターでタッチアップできるブランドなので、まず一度肌にのせてみるのがいちばん確実だと思います。
向いている人/使う前に確認したい人
🙆♀️ 向いていそうな人
- 紫外線や日々のストレスによる肌のくすみ・ハリ低下が気になり、抗酸化と鎮静の両方をケアしたい人
- 原料の品種・産地・開発の手間といったストーリーに価値を感じる人
- ローズやゼラニウムの華やかな香りに包まれるスキンケア時間が好きな人
- 朝晩しっかり使って、開封後の6ヶ月で使い切れる人
- ブラックローズ スキン インフュージョン クリームと合わせて、コレクションで揃えたい人
🔍 使う前に確認したい人
- アルコール(変性アルコール)でピリつきを感じたことがある人 → 表示5番目と上位です
- 香料・精油でかゆみや赤みが出たことがある人 → アレルゲン表示の香気成分が8種類あります。パッチテストを
- 第三者機関の臨床データを判断材料にしたい人 → このセラム原料そのものの外部データは公開されていません
- 「シミを消す」「シワを改善する」といった特定の効能を求めている人 → 化粧品であり、有効成分を配合した医薬部外品ではありません

ざっくり言うと「成分表の点数」で選ぶ人より、「原料と香りと体験」に払える人向けの一本です。どちらが正しいということではなくて、完全に好みの分かれ道ですね。
よくある質問
Q. 「ブラックローズ モレキュラー エキス」は全成分のどれですか?
A. 公式にINCI名(成分表示名)の対応が書かれていないため、断定はできません。ただしバラ由来の成分のうち、花水(芳香蒸留水)と花油(精油)を除くと残るのは[ROSA HYBRID FLOWER EXTRACT](表示11番目)だけで、ブラックバカラローズがハイブリッドティー系の品種であることとも合います。これが該当する可能性が高い、というのが成分表からの読み取りです。
Q. 2剤式ということは、開封したら早く使い切らないといけませんか?
A. メーカーはアクティベーション(開封・起動)から6ヶ月間、成分の鮮度を保つ設計だと説明しています(出典4)。30mLを朝晩使うペースなら十分収まる期間ですが、たまにしか使わない予定なら、その点は考えておいたほうがよさそうです。
Q. 「ハリ +105%」って、ハリが2倍になるということですか?
A. いいえ。これは30名が2ヶ月使ったあとに答えた自己評価アンケートのスコアの伸びです(出典1・出典2)。肌を機器で測った数値でも、使っていない人と比べた数値でもありません。使った人の実感の目安として受け取るのが正確です。
Q. 敏感肌でも使えますか?
A. 一概には言えません。鎮静方向の成分(ヒバマタエキス・ビタミンB12)が入っている一方で、変性アルコールが5番目と上位にあり、精油由来の香気成分も8種類あります。肌が敏感な時期は、まず腕の内側などで試してから顔に使ってください。
Q. どの順番で使えばいいですか?
A. 公式の案内では、朝晩、洗顔後の清潔な肌に塗り、そのあとにブラックローズ スキン インフュージョン クリームを重ねる2ステップです(出典2)。この美容液自体に高い油分は入っていないので、乾燥が気になる季節は乳液やクリームでフタをする使い方のほうが安定すると思います。
まとめ
シスレー ブラックローズ コンセントレート ラディアンス セラムは、「希少なバラのアントシアニンを、いかにフレッシュなまま肌に届けるか」に振り切った一本でした。1年に1ヶ月しか収穫できないブラックバカラローズの花びらを100回以上の抽出試験で仕上げ、光・酸素・pHに弱いというアントシアニンの弱点に対して、2剤式パッケージとクエン酸によるpH管理で二重に対策する。成分表と公式の説明が、きれいに同じ方向を向いています。
処方としては、抗酸化(バラのアントシアニン・ブドウ葉・レモン)と抗炎症(ヒバマタエキス・ビタミンB12)の二本立てです。とくにビタミンB12は外用でのヒト臨床データがある成分で、目立たないながら足元を固めています。一方で、独自エキスそのものの第三者データは公開されておらず、「+105%」といった数字もメーカーの自己評価アンケートによるものです。裏づけの現在地としては「理論と原料へのこだわりは十分に説明されているが、このアイテム固有の外部データはこれから」という段階です。
そして、買う前にいちばん確認したいのは変性アルコールが上位にあることと、精油由来の香気成分が8種類あること。ここは体質によってはっきり相性が出るところなので、店頭で一度肌にのせてから決めるのが確実だと考えています。

4万円という価格には、原料の希少さ・開発の手間・容器の設計・香りの体験がぜんぶ乗っています。「データを買う」タイプではなく「作り込みを買う」タイプの美容液。そこに納得できるかどうかが、この一本の分かれ目だと思います。
▶ 同じ「メーカー独自の技術訴求の正体を成分表から読み解く」切り口では、「Anua(アヌア)ドクダミ77 ヒアルロン スージングトナー」の成分解析もあわせてどうぞ。
全成分と特徴
| 成分名 | 役割 | 特徴 |
|---|---|---|
| 水 | 溶媒 | 処方の土台。表示1番目でもっとも配合量が多い |
| センティフォリアバラ花水 | 基材・賦香 | バラの芳香蒸留水。濃縮したエキスとは別物で、香りと保湿を兼ねる |
| プロパンジオール | 保湿・溶剤 | 植物由来が多い多価アルコール。他成分の溶けやすさを助ける |
| グリセリン | 保湿 | 角層に水分を引き寄せて保つ定番の保湿成分 |
| 変性アルコール | 溶剤・感触調整 | 表示5番目と上位。精油やエキスを溶かし込み、軽い使用感を出す。敏感な人は注意 |
| ペンチレングリコール | 保湿・防腐補助 | 保湿しながら防腐剤のはたらきを底上げする |
| ヒバマタエキス(シーロックウィード エキス) | 整肌・鎮静 | メーカーが名指しする鎮静担当。褐藻由来でフコイダンなどの多糖体を含む |
| ヒアルロン酸Na | 保湿 | 角層表面に水分を抱える定番成分。塗った直後のうるおい感に強い |
| バイオサッカライドガム-1 | 保湿・皮膜 | 発酵由来の多糖。膜をつくり、時間が経ってからの持続的な保湿に強みがあるとされる |
| レモン果実エキス | 抗酸化・整肌 | ビタミンC・フラボノイドを含み、抗酸化やチロシナーゼ抑制の報告がある |
| バラ花エキス | 訴求成分(抗酸化) | 独自成分「ブラックローズ モレキュラー エキス」に該当する可能性が高い(公式の対応表示はなし) |
| ブドウ葉エキス | 抗酸化 | ブドウ葉のポリフェノール類を利用した抗酸化成分 |
| シアノコバラミン(ビタミンB12) | 整肌・抗炎症 | 外用でのヒト臨床試験(49名・8週間・プラセボ対照)がある成分 |
| 加水分解野菜タンパク | コンディショニング | 植物由来のタンパク質を細かくしたもの。肌なじみを整える |
| ハクモクレン葉油 | 賦香(精油) | マグノリアの香りを担う天然精油 |
| ニオイテンジクアオイ油 | 賦香(精油) | ゼラニウム油。ローズに似た甘い香り |
| ダマスクバラ花油 | 賦香(精油) | いわゆるローズオイル。香料としてはとても高価な精油 |
| ポリグリセリル-10ステアレート | 乳化 | ポリグリセリン系の乳化剤。比較的マイルドなタイプ |
| カプリル酸/カプリン酸グリセリル | 乳化・防腐補助 | 乳化を助けつつ、防腐サポートも兼ねる |
| ポリグリセリル-10オレエート | 乳化 | 同じくポリグリセリン系の乳化剤。精油や脂溶性成分を処方に収める |
| マルトデキストリン | 安定化・感触調整 | でんぷん由来の多糖。エキス類の担体としても使われる |
| セルロースガム | 増粘 | 美容液のとろみをつくる増粘剤 |
| カルボマー | 増粘・ゲル化 | 水にとろみを与えるゲル化剤。感触の要 |
| クエン酸Na | pH調整 | クエン酸とペアでpHを整える。アントシアニンの安定性にも関わる |
| BG(ブチレングリコール) | 保湿・溶剤 | 定番の保湿・溶剤。この位置なら少量の調整目的と考えられる |
| クエン酸 | pH調整 | 処方を弱酸性側に保つ。色素の安定にも寄与する |
| アルギン | 増粘・皮膜 | 海藻由来の増粘成分。ヒバマタエキスとは役割が別で、感触づくりの担当 |
| 安息香酸Na | 防腐 | ソルビン酸Kと組み合わせて使われる定番の防腐剤 |
| ソルビン酸K | 防腐 | 安息香酸Naとのペアで品質を守る |
| リナロール | 香気成分 | 精油に天然に含まれる成分。EUでアレルゲン表示の対象 |
| ニオイテンジクアオイ花油 | 賦香(精油) | ゼラニウムの花から採った精油 |
| シトロネロール | 香気成分 | ローズ・ゼラニウム系の香りの主成分のひとつ。アレルゲン表示対象 |
| ゲラニオール | 香気成分 | バラらしい甘い香りの成分。アレルゲン表示対象 |
| β-カリオフィレン | 香気成分 | スパイシー寄りの香気成分。アレルゲン表示対象 |
| シトラール | 香気成分 | レモン様の香気成分。アレルゲン表示対象 |
| ピネン | 香気成分 | 樹木様の香気成分。アレルゲン表示対象 |
| テルピネオール | 香気成分 | ライラック様の香気成分。アレルゲン表示対象 |
| 酢酸ゲラニル | 香気成分 | フローラルな香気成分。アレルゲン表示対象 |
※配合の正確な順序・全項目は商品の全成分表示をご確認ください。配合量は非公開です。
特性タグ:エイジングケア/保湿/抗酸化/鎮静/香りあり/アルコール配合/2剤式
参考文献・出典(10件)
- (出典1)シスレー公式サイト(日本語)商品ページ「ブラックローズ コンセントレート ラディアンス セラム」(全成分・自己評価試験の数値・使用方法):https://www.sisley-paris.com/ja-JP/black-rose-concentrated-serum-132080.html
- (出典2)シスレー公式サイト(英語/INT)商品ページ(試験条件「30名・2ヶ月・1日2回の自己評価」/アンジュー地方という産地表記/香りの構成/使用手順):https://www.sisley-paris.com/en-INT/black-rose-concentrated-serum-132080.html
- (出典3)PR TIMES/シスレージャパン株式会社 ニュースリリース(2026年2月17日配信。発売日・価格・「南仏で1年のうち1ヶ月しか収穫できないブラックバカラローズ」・2剤式パッケージ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000102.000032296.html
- (出典4)美的.com「加藤智一さん連載」記事(100回以上の抽出試験・2年以上の研究期間/アントシアニンが光・酸素・pHにデリケートであること/開封後6ヶ月の鮮度設計/シーロックウィードエキス・ビタミンB12との組み合わせ):https://www.biteki.com/skin-care/others/2114966
- (出典5)シスレー公式サイト ブラックローズ コレクション ブランドページ(コレクション共通コンセプト/アントシアニンが外的ストレスから肌を守るという説明):https://www.sisley-paris.com/ja-JP/black-rose-collection-apac.html
- (出典6)美的.com 商品情報ページ(価格・容量・発売日の裏づけに使用):https://www.biteki.com/item/2112497
- (出典7)Sim JY, et al. 「Inhibition of Photoaging by Anthocyanin Metabolites Derived from Rose Petal Extract」Molecular Nutrition & Food Research. 2024;68(5):2300611.(マウスへの経口投与+ヒト培養細胞での実験。COL1A1の発現保護・光老化抑制を報告):https://doi.org/10.1002/mnfr.202300611
- (出典8)Lee MH, Nam TG, Lee I, et al. 「Skin anti-inflammatory activity of rose petal extract (Rosa gallica) through reduction of MAPK signaling pathway」Food Science & Nutrition. 2018;6(8):2560-2567.(培養細胞での抗炎症研究):https://doi.org/10.1002/fsn3.870
- (出典9)Stücker M, Pieck C, Stoerb C, et al. 「Topical vitamin B12—a new therapeutic approach in atopic dermatitis—evaluation of efficacy and tolerability in a randomized placebo-controlled multicentre clinical trial」British Journal of Dermatology. 2004;150(5):977-983.(49名・8週間のプラセボ対照ランダム化比較試験):https://doi.org/10.1111/j.1365-2133.2004.05866.x
- (出典10)Klimek-Szczykutowicz M, Szopa A, Ekiert H. 「Citrus limon (Lemon) Phenomenon—A Review of the Chemistry, Pharmacological Properties, Applications in the Modern Pharmaceutical, Food, and Cosmetics Industries, and Biotechnological Studies」Plants. 2020;9(1):119.(総説。抗酸化・チロシナーゼ抑制を含むレモン由来成分の薬理作用):https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7020168/

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