アクアインプールとは?資生堂×日油の保湿成分と全成分表での見つけ方

Instagram(@alice_kaiseki)で2.1万人にスキンケア情報を発信している、日本化粧品検定1級・コスメコンシェルジュのありすです✨

今回は、全成分表で見かける「ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ジメチルエーテル」の正体を調べました。資生堂が「アクアインプール」と呼んでいる保湿成分の仲間で、何のために入っているのかを、資生堂の発表から確かめています。

目次(18項目)

ひとことで言うと

ありす

アクアインプールは、資生堂と日油が共同で開発した、水にも油にもなじむ保湿向けの成分の総称です。全成分表にはこの名前では出てこなくて、「ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ジメチルエーテル」のような長い名前で並びます。資生堂の化粧水と乳液に「標準装備」されている成分で、化粧水ではグリセリンのような保湿成分を角層まで届けやすくする役目をしています。

この成分のポイント
  • 資生堂×日油の共同開発:油になじむ部分と水になじむ部分を並べた分子の総称が「アクアインプール」
  • 資生堂の化粧水・乳液に標準装備:全成分では(14)(7)などの「ジメチルエーテル」で終わる名前で並ぶ
  • 保湿成分を角層へ届ける:水にも油にもなじむので、肌に入りにくいグリセリンなどを角層へ多く届けるとされている
  • 設計を変えられる:同じ考え方から、透明で伸びのよい増粘剤まで作られている
【はじめての方必読】当サイトの成分解析について
  • 成分解析は各成分の一般的な配合目的を記載したもので、製品の効果効能を保証するものではありません。
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アクアインプールとは?資生堂と日油が作った保湿成分

水になじむ部分と油になじむ部分を並べた分子

資生堂は、日油株式会社と共同で開発した成分を「アクアインプール(総称)」と呼んでいます。油になじみやすい部分(親油部)と、水になじみやすい部分(親水部)を「適宜配列させた」分子だと説明しています。[1]

資生堂の図では、親水部(エチレンオキシド)と親油部(プロピレンオキシド)が鎖の中にランダムに並び、両端がメチル基で閉じた形で描かれています。この形の成分を、資生堂は「保湿成分として活用」と書いています。

アクアインプールの分子のイメージ図。水になじむ部分と油になじむ部分が1本の鎖に並び、両端がメチル基で閉じている
アクアインプールの分子のイメージ(ありす作成)

資生堂は、この成分の特長を「目的や機能に応じた分子設計ができる」ことだとしています。水になじむ部分と油になじむ部分の数や並べ方を変えれば、性質を作り分けられるということです。[1]

アクアインプールは「総称」

アクアインプールは、ひとつの成分の名前ではなく、この設計で作られた成分グループの呼び名です。なかでも資生堂が名前を挙げているのが、「保湿効果に重点をおいて開発した(POE/POP)ジメチルエーテル」です。[1]

そのため、全成分表で同じ名前を見つけても、資生堂のアクアインプールそのものかどうかは、成分表からは決められません。同じ表示名の原料をほかの会社が使うこともあるからです。

ありす

「アクアインプール」はブランド名のようなもので、成分表には化学の名前で出てきます。水と油の両方になじむ部品を1本の鎖に並べた、という設計がこの成分の持ち味だと思います。

全成分表ではPEG/PPG-14/7ジメチルエーテルと書かれている

名前の読み方

全成分表では、[ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ジメチルエーテル]のように書かれます。国際的な表示名(INCI)では「PEG/PPG-14/7 Dimethyl Ether」です。

長い名前ですが、分けて読むとシンプルです。

  • ポリオキシエチレン(PEG):水になじむ部分
  • ポリオキシプロピレン(PPG):油になじむ部分
  • ジメチルエーテル:鎖の両端がメチル基で閉じていること

カッコの数字は、それぞれの部分がいくつつながっているか(平均の数)を表しています。[3]

14/7と17/4の違い

よく見かけるのは「(14)(7)」と「(17)(4)」の2つです。(17)(4)は水になじむ部分が多く、油になじむ部分が少ないので、より水側に寄った設計と読めます。

ただし、これは構造からの私の見立てです。2つの使い心地や保湿の違いを比べたデータは見つかっていないので、「どちらが上」とは言えません。

資生堂の化粧水と乳液には標準装備されている

資生堂は、アクアインプールを「資生堂の化粧水と乳液に標準装備している独自成分」と紹介しています。特定のブランドだけの成分ではなく、資生堂のスキンケアの土台に入っている成分ということです。[5]

実際に全成分を見ると、敏感肌ブランドの「dプログラム」の化粧水には(14)(7)と(17)(4)の両方が並んでいます。[4]エリクシールやアクアレーベルの化粧水にも(14)(7)が入っています。[7]

なお、資生堂の紹介記事には化学の名前までは書かれていません。商品ごとにどの名前で入っているかは、それぞれの全成分で確かめるのが確実です。dプログラムの3種の中身の違いは「dプログラム化粧水3種の解析」にまとめています。

ありす

成分表で「ジメチルエーテル」で終わる長い名前を見つけたら、この系統の成分なんだなと見当がつきます。資生堂のスキンケアの全成分を読むときに、知っておくとちょっと楽しくなる名前です😊

アクアインプールの働き:保湿成分を角層へ届ける

化粧水では、グリセリンなどを角層へ多く届ける

グリセリンのような保湿成分は、水にはよく溶けますが、油をはじく性質があります。そのため、本来は肌の中へ入っていきにくい成分なんです。[5]

そこで役立つのが、水にも油にもなじむアクアインプールです。資生堂は、化粧水に入れると「本来浸透しにくいグリセリンのような保湿成分も、角層へより多く届けて」保湿の働きを高めると説明しています。[5]

たとえるなら、水と油のあいだに立つ通訳のような役です。自分も保湿成分でありながら、ほかの保湿成分を角層(肌のいちばん外側の層)まで連れていく役目もしている、ということになります。アクアインプール自体も保湿力が高く、べたつきにくさと高い保湿を両立するとされています。[5]

乳液では、角層のキメを整える手助けをする

乳液に入ったアクアインプールについて、資生堂は、角層の外壁(CE)を成熟させ、バリア機能を保つ細胞間脂質を整える働きがあるとしています。角層の主成分であるケラチン線維を整列させる働きもあるそうです。[5]

肌がうるおいを作る力を後押しする研究も

2022年の資生堂の発表では、肌の中で天然保湿因子(NMF)を作る酵素「PAD1」が、乾燥した環境で増えることが分かりました。そのうえで、PAD1を増やす成分を探したところ、アクアインプールにその効果が見つかったと発表されています。細胞を使った実験の結果です。[6]

資生堂は、アクアインプールを「保湿効果に重点をおいて開発した」とも説明しています。[1]

同じ仲間の成分の研究の流れは、日油の研究者がまとめた2019年の総説で読めます。出発点は、小さな保湿成分は水を抱える力が強い一方で、たくさん入れると使用感が悪くなりやすい、という課題でした。[2]

Research研究で分かっていること

日油の総説では、同じ仲間(両親媒性ポリエーテル)のグリセリルエーテル型の成分を「べたつきがなく肌なじみのよい水溶性保湿油」として設計し、高い保湿効果と、有効成分の皮膚浸透をコントロールする効果が確認されたと紹介されています。ジメチルエーテル型とは両端の形が違う、近い仲間の成分の話です。

出典:関口孝治, 日本化粧品技術者会誌, 2019(総説)[出典2]

浸透については、化粧品の浸透はどこまで本当かの記事で、化粧品の「浸透」の考え方をまとめています。

ここまでの働きは、資生堂の研究員の解説と発表によるものです。角層の水分量がどれだけ増えたかといった数値は、いまのところ公開されたものを見つけられていません。

ありす

自分もうるおいを持ちながら、グリセリンたちを角層まで連れていってくれる成分なんですね。資生堂の化粧水を使うとしっとりなじむ感じがするのは、この子のおかげもあるのかなと思いました。

同じ設計から「透明で伸びのよい増粘剤」まで作られた

アクアインプールの設計は、保湿以外にも使われています。出典1の資生堂の発表は、さらさらの油にとろみをつける技術の話で、アクアインプールはその設計のヒントとして出てきます。[1]

資生堂は、油になじむ部分をプロピレンオキシドより油に寄ったブチレンオキシドに替え、水になじむ部分の両側に配置しました。これが「トリブロック型コポリマー((POE/POB)ジメチルエーテル)」です。

アクアインプールの設計から透明な増粘剤ができるまでの4ステップの流れ図
資生堂の発表をもとにありすが図解

これを低粘度の油と少しの水に混ぜると、次のような性質が出ると発表されています。[1]

  • たれ落ちしにくい
  • 力を加えると流れやすくなり、肌や髪にのばしやすい
  • 一度やわらかくなっても、時間がたつと元の粘度に戻る
  • 透明性が高い

この増粘剤がどの商品に入っているかは、発表からは分かりません。それでも、部品の種類と並べ方を変えるだけで保湿成分にも増粘剤にもなる、という設計の幅がよく分かる例だと思います。

ありす

同じ「部品を並べる」考え方から、保湿成分もジェルのとろみも作れるのは面白いところです。資生堂が「目的に応じて設計できる」と言っている意味が、この例でぐっと分かりやすくなりました。

アクアインプールが気になる人の確認ポイント

成分表の名前から「アクアインプール配合」と言い切れる?

資生堂の化粧水と乳液なら、資生堂自身が標準装備と説明しているので、入っていると考えてよさそうです。ほかの会社の商品で同じ名前を見つけた場合は、同じ表示名の原料をほかの会社が使うこともあるので、アクアインプールとは言い切れません。

肌に合うかは成分名で決まる?

決まりません。合う・合わないは、ほかの成分も含めた商品ごとの処方で変わります。この成分単体の刺激性について、個別の評価データは今回の調査では確認できませんでした。気になる人は、腕の内側などで試してから顔に使ってください。

よくある質問

アクアインプールは全成分表にどう書かれていますか?

「アクアインプール」とは書かれません。「ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ジメチルエーテル」などの名前で並びます。読み方は全成分表での書かれ方の節で説明しています。

PEG/PPG-14/7ジメチルエーテルは何のための成分ですか?

保湿のための成分です。資生堂は、この仲間の(POE/POP)ジメチルエーテルを「保湿効果に重点をおいて開発した」と説明しています。

浸透を助ける成分ですか?

資生堂は、化粧水ではグリセリンのような本来浸透しにくい保湿成分を、角層へより多く届けると説明しています。くわしくは働きの節で書いています。

どの商品に入っていますか?

資生堂は「化粧水と乳液に標準装備」と紹介しています。全成分では、dプログラム・エリクシール・アクアレーベルの化粧水などで確認できました。

敏感肌でも使えますか?

敏感肌向けブランドのdプログラムの化粧水にも入っている成分です(モイストケア ローション EXの解析)。ただ、肌に合うかは商品ごとの処方で変わるので、腕の内側などで試してから使ってください。

まとめ

ありす

調べてみて、あの長い名前の正体が「水と油の両方になじんで、保湿成分を角層まで届ける資生堂の定番成分」だと分かって、成分表を見るのがちょっと楽しくなりました。

ただ、ほかの会社の商品で同じ名前を見つけても「アクアインプール入り」とは決められません。ここは覚えておいてもらえるとうれしいです。

次に化粧水を選ぶときは、全成分の中に「ジメチルエーテル」で終わる名前がないか探してみてください✨

関連記事:dプログラム化粧水3種の全成分を成分解析|植物エキス・油分の違いと選び方/dプログラム モイストケア ローション EXを成分解析

出典

  1. 資生堂 ニュースリリース「資生堂、流動性の高い低粘度油分を増粘させる新たな増粘技術の開発に成功」:https://corp.shiseido.com/jp/newsimg/archive/00000000001058/1058_y8w06_jp.pdf
  2. 関口孝治「化粧品用保湿剤の種類と特徴 ─両親媒性ポリエーテルとリン脂質ポリマーの応用─」日本化粧品技術者会誌. 2019;53(4):253–259.(総説):https://doi.org/10.5107/sccj.53.253
  3. Cosmetics Europe「COSMILE Europe: PEG/PPG-14/7 Dimethyl Ether」(成分名の読み方の参考):https://cosmileeurope.eu/inci/detail/11191/peg-ppg-14-7-dimethyl-ether/
  4. 資生堂オンラインストア「d プログラム モイストケア ローション EX」全成分表示:https://www.shiseido.co.jp/sw/onlinestore/products/H80801.html
  5. 資生堂 Beauty Journey「資生堂化粧水の先端サイエンス情報」(2022年12月26日・資生堂研究員の解説):https://www.shiseido.co.jp/sw/beautyinfo/DB009926/
  6. 資生堂 ニュースリリース「資生堂、乾燥環境に対する肌本来の適応メカニズムを解明」(2022年5月31日):https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003402
  7. @cosme 商品情報(全成分表示)「エリクシール リフトモイスト ローション しっとりタイプ ba」:https://www.cosme.net/variations/1214922//「アクアレーベル トリートメントローション(オイルイン)とてもしっとり」:https://www.cosme.net/variations/1167336/
ありす
ありす
コスメコンシェルジュ

日本化粧品検定1級・コスメコンシェルジュ。Instagram(@alice_kaiseki)で2.1万人にスキンケア情報を発信しています。このサイトでは、化粧品の全成分を公式情報と研究データをもとに読み解き、点数を付けずに「どんな肌・好みと相性がいいか」をお伝えしています。

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